ケルソス Kelsos 生没年不詳(3世紀頃)
【キリスト教史解説】ケルソス(Celsus)― 最古の反キリスト教思想家
立場:ギリシア系哲学者、初期キリスト教の批判者
主著:『真理の言葉(Λόγος Ἀληθής)』※現存せず
現存最古の体系的なキリスト教批判書である。
思想的立場
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オリゲネスは彼をエピクロス派と呼んだが、現代研究では否定的。
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実際にはプラトン主義を中心とする折衷主義的哲学者と考えられる。
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伝統宗教とローマ帝国秩序を擁護する保守的知識人。
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神観は単純な多神論ではなく、最高神を頂点とする階層的神観(ヘノテイズム的傾向)。
主な批判内容
1.イエス批判
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処女懐胎を否定
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出自を不名誉なものと主張
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奇跡を魔術と解釈
2.教義批判
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受肉思想を非合理とみなす
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復活思想を荒唐無稽と批判
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聖書解釈を恣意的と指摘
3.社会批判
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キリスト教徒が国家祭儀を拒否することを問題視
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軍務・公共義務を回避する態度を非難
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キリスト教を新奇で分裂的な宗教とみなす
史料的特徴
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『真理の言葉』は448年に禁書とされ消失。
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内容はオリゲネスの反駁書から再構成される。
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オリゲネスの引用は比較的忠実と考えられている。
歴史的意義
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最古の本格的反キリスト教哲学的論駁。
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キリスト教弁証学発展の重要契機。
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キリスト教がローマ知識層からどのように見られていたかを示す一次的証言。