2026年10月29日木曜日

1-0 トップページ(目次)

1-1 新宗教・新興宗教解説

   オウム真理教、創価学会、真如苑など、新宗教の解説動画

1-2 キリスト教解説

   キリスト教学、キリスト教史、教会史)や、神学、聖書文書など

1-3 説教や聖書研究をする信徒のための聖書注解

   教会などのグループで、説教や奨励、聖書研究会の準備として、信徒向けの注解

宗教学(目次)


【キリスト教入門・熟練者の学び直し講座】⑤「カインとアベル」|「バベルの塔」



1.復習:人間の創造と堕罪

  • 創世記2章17節:善悪の知識の木から食べてはならない、という命令。
  • 女は蛇に誘われて実を食べ、男にも渡し、男も食べる → エデンの園から追放(3章)。
  • キリスト教、とくに西方教会では「堕罪」の物語として理解されてきた。ただし、ユダヤ教ではこの箇所を「原罪」の教えとして読むことは一般的ではない。

問い: 罪とは、規則に違反することか。それとも、神や他者との関係が損なわれることか。続く4章では、罪の問題が人間同士の関係にまで広がっていく。


2.カインとアベル――罪と他者への責任

2-1.二人の兄弟(創世記4章1~2節)

  • アベルは羊を飼う者(牧畜)、カインは土を耕す者(農耕)となる。
  • 本文は農耕そのものを否定していない。人間はもともと土を耕す者として置かれている(2章15節、3章23節)。
  • 職業の違いだけから、二人の宗教的・道徳的な優劣を判断することはできない。

2-2.献げ物をめぐる問題(創世記4章3~5節)

  • カインは土の実りを、アベルは羊の群れの中から肥えた初子を献げる。
  • 主は「アベルとその献げ物」に目を留め、「カインとその献げ物」には目を留めなかった。カインは激しく怒り、顔を伏せる。

本文に書かれていないこと

神がカインの献げ物に目を留めなかった理由は、本文には説明されていない。カインの献げ物が「初物」だったとも、品質が悪かったとも書かれていない。

これまでの主な解釈

献げ物の違い(「初子」と「土の実り」)/献げる者の態度(神は献げる人も見ている)/神の自由な選び/物語全体が伝える神学的メッセージ

→ 本文に書かれていない理由を、聖書が明言しているかのように説明しないことが大切。

2-3.罪への警告(創世記4章6~7節)

  • 神はカインに「なぜ怒るのか。なぜ顔を伏せるのか」と問いかける。
  • 罪は戸口で待ち伏せする存在のように描かれる。神は「お前はそれを支配せねばならない」と語る。
  • この句(ヘブライ語 timšol-bô)は「支配せよ」(命令)とも「支配できる/支配するだろう」(可能・約束)とも読め、翻訳によって訳が分かれる。
  • いずれに読んでも、問われているのは怒りそのものより、怒りにどう向き合うかである。

2-4.弟アベルの殺害(創世記4章8~12節)

  • カインは野原で弟アベルを襲い、殺害する。
  • 神:「お前の弟アベルは、どこにいるのか」/カイン:「知りません。わたしは弟の番人でしょうか」
  • カインは居場所を知らないと答えるだけでなく、弟に対する責任そのものを問い返している。
  • アベルの血が土の中から叫ぶ。カインは土から呪われ、地上をさまよう者となる。

ここに描かれる問題: 怒り → 暴力 → 生命を奪う → 責任の否定 → 神・他者・土地との関係の破壊

2-5.カインのしるし――裁きと保護(創世記4章13~17節)

  • カインは、出会う者に殺されるのではないかと恐れる。神は、カインを殺す者は七倍の復讐を受けると告げ、しるしを与える。
  • しるしの形状も、身体に付けられたのかどうかも、本文は説明していない。原文は「カインに(付けた)」とも「カインのために(定めた)」とも読める。
  • 裁き: さすらう者となる / 保護: 無制限の報復から守られる
  • 神の保護は、罪をなかったことにはしないが、罪を犯した者が際限なく報復されることも防いでいる。
  • その後、カインはエデンの東、ノドの地に住み、町エノクを建てる(16~17節)。→ バベルの「町」と比較できる。

この物語から考えること

  1. カインはなぜ弟を殺すに至ったのか。
  2. 「わたしは弟の番人でしょうか」を現代社会に当てはめると、どのような問題が見えてくるか。
  3. 神がカインを保護したことは、罪や責任について何を示しているか。

3.バベルの塔――人間の一体性と傲慢

3-1.同じ言葉を話す人々(創世記11章1~2節)

  • 全地の人々は同じ言葉を話していた(物語の設定であり、歴史言語学上の人類史とは同一視できない)。
  • 人々は東の方から移動し、シンアルの平野に住み着く(miqqedem は「東へ」とも訳せる。口語訳「東に移り」)。
  • ニムロドは10章8~12節に登場するが、11章で塔を建てた人々を彼が率いたとは書かれていない。塔の建設者とする見方は、ヨセフス『ユダヤ古代誌』などの後代の伝承による。

3-2.れんがとアスファルトによる建築(創世記11章3節)

  • 石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いる。
  • 石材の乏しい古代メソポタミアでは、焼成れんがや天然アスファルト(瀝青)が建築を支えていた。
  • ただし、本文の目的は建築史の記録ではない。技術は人間の計画を可能にするものとして登場する。

3-3.塔を建てる目的(創世記11章4節)

「頂が天に届く塔のある町を建て、名を上げよう。全地に散らされないように」

  1. 名を上げること:名声や自己顕示への欲求。
  2. 散らされないこと:一か所にまとまってとどまろうとする。「地に満ちよ」(1章28節、9章1節)への抵抗と読む解釈もある。

本文と解釈の区別

「天に届く」は神の領域に踏み込む傲慢として読まれてきたが、「非常に高い」ことを表す慣用表現でもある(申命記1章28節「城壁は天に達する」)。

本文は、人々が神そのものになろうとしたとは明言していない。「神になろうとする挑戦」は神学的な解釈である。

3-4.神による言語の混乱(創世記11章5~7節)

  • 主は町と塔を見るために降って来る。一つの民・一つの言葉であるため、何を企てても妨げられない、と語る。
  • 神は言葉を混乱させ、互いの言葉が理解できないようにする。→ 人間の一体性は、必ずしも肯定的には描かれていない。
  • 「我々は降って行って」という複数形の解釈:
    • 天上の会議(神と天的存在たち)を反映する表現
    • 尊厳の複数(王が自らを複数形で呼ぶような表現)
    • 自分自身に語りかける熟慮の表現
    • 三位一体を示唆するとする、教父以来の伝統的なキリスト教の読み
  • 複数形だけから、どれか一つの解釈に断定することはできない。

3-5.人々の離散とバベルという名前(創世記11章8~9節)

  • 人々は全地に散らされ、町の建設をやめる(本文がやめたと記すのは「塔」ではなく「町」)。
  • 聖書の説明:ヘブライ語「バラル」(混ぜる、混乱させる)との語呂合わせ。
  • アッカド語ではバビロンは Bāb-ili(m)(神の門)と解されたが、これ自体もより古い地名の民間語源と考えられている。
  • → 「混乱」も「神の門」も、都市の名に意味を与える語呂合わせ。本文の説明と歴史言語学上の語源は区別する。
  • 洪水物語(6~9章)と異なり、人類を滅ぼすのではなく、言語の混乱と離散によって計画が中断される。

この物語から考えること

  1. 同じ言葉を話し、同じ目的を持つことには、どのような利点と危険性があるか。
  2. 「名を上げること」と「散らされないこと」は、人間のどのような欲求を表しているか。
  3. 集団の一致は、いつも望ましいものなのか。
  4. 言語や文化の違いは対立を生むだけか。新しい関係や理解を生み出す可能性もあるか。

4.二つの物語を比較する

観点カインとアベルバベルの塔
登場する人間二人の兄弟一つの言葉を話す人々
問題となる行動怒りと殺害、責任の否定町と塔の建設、名声の追求、離散の回避
損なわれるもの兄弟関係、生命、土地との関係人々の計画、一つの言語による意思疎通
神の対応問いかけと裁き、カインの保護言語の混乱と人々の離散
「町」の建設さすらう者カインが町エノクを建てる人々が町を建てるが、中断される
考察できる問題他者への責任と生命の尊重集団の一体性、権力、名声、多様性

個人の怒りが生命を奪う行為につながる物語と、集団の一致が一つの計画を推し進める物語。聖書における罪の問題を、個人の道徳だけでなく、人間関係や集団のあり方にまで広げて考えることができる。


5.まとめ――罪、共同性、多様性

  • カインとアベル: 他者への責任を否定し、怒りを暴力へと変える人間。神は裁きつつ、生命を守るしるしを与える(責任と保護)。
  • バベルの塔: 一つの目的に向かう一致は中断される。人間の一体性や協力は、それ自体で無条件に善とは限らない。
  • 協力や一致が名声や支配への欲求と結びつくとき、他者の生命・自由・多様性が損なわれるおそれがある。

問うべきこと

何のために協力するのか。その協力によって、誰が守られ、誰が排除されるのか。

この問いは、現代の教会、大学、企業、国家、そして私たちの日常生活にも関わっている。


1-2-1 キリスト教史解説(教会史)














キリスト教と歩んだ女子大学 創立の歴史とこれから──知名度順イッキ18校

 


キリスト教と歩んだ女子大学 ― 創立の歴史とこれから

知名度順イッキ18校 レジュメ


1. はじめに

  • 明治初期以降、来日したキリスト教宣教師が近代女子教育の発展に大きな役割を果たした
  • 女性が高等教育を受ける機会はごく限られていた
  • 宣教師と日本人キリスト者が各地に女子のための学校を創設した
    • 横浜・大阪の外国人居留地など、開港地から始まった学校も多い
  • 現在、少子化の中で、女子大学は共学化や募集停止という岐路に立っている

2. 18校の現在

現状校数該当校
女子大として継続12校聖心・津田塾・東京女子 ほか
学生募集停止2校恵泉女学園・京都ノートルダム
共学化済1校神戸松蔭
共学化予定3校平安女学院・広島女学院・仙台白百合

→ およそ3校に1校が転換点を迎えている

3. 創立の波 ― 源流となった学校の創立年代

年代学校
1870年代フェリス、神戸女学院、平安、同志社女子
1880年代白百合、東洋英和、福岡、宮城、清心(岡山)、広島
1890〜1900年代松蔭、津田、聖心
1910〜1930年代東京女子、恵泉、清泉
戦後京都ノートルダム
  • 明治前半(1870〜80年代)に宣教師による創立が集中
  • 明治後半〜昭和初期には、日本人教育者(津田梅子、河井道)や修道会による学校が加わる
  • ※仙台白百合は源流の創立年を扱っていない

4. 18校一覧

No.大学名系統源流大学開学現状
1聖心女子大学カトリック1908年 日本で教育開始(母体:聖心会、1800年仏で創立)1948年継続
2津田塾大学日本人創立者1900年 津田梅子が女子英学塾を創立1948年継続
3東京女子大学プロテスタント1918年 北米諸教派と日本側有志の協力で開学(初代学長:新渡戸稲造)1948年(新制)継続
4同志社女子大学プロテスタント1876年 京都に女子塾(新島八重、宣教師スタークウェザーら)1949年継続
5フェリス女学院大学プロテスタント1870年 宣教師メアリー・キダーが横浜で授業開始1965年継続
6神戸女学院大学プロテスタント1873年 宣教師の私塾(1875年 女学校開校)1948年継続
7白百合女子大学カトリック1878年 函館に修道院(1881年 東京・神田に学校)/シャルトル聖パウロ修道女会1965年継続
8ノートルダム清心女子大学カトリック1886年 私立岡山女学校(1924年 ナミュール・ノートルダム修道女会が来岡)1949年継続
9清泉女子大学カトリック1935年 清泉寮(1938年 清泉寮学院)/聖心侍女修道会1950年継続
10東洋英和女学院大学プロテスタント1884年 カナダ・メソジスト教会の宣教師カートメルが麻布で開校1989年継続
11恵泉女学園大学プロテスタント1929年 河井道が創立1988年募集停止(2024年度〜、閉学前提)
12宮城学院女子大学プロテスタント1886年 宮城女学校1949年継続
13福岡女学院大学プロテスタント1885年 宣教師が福岡英和女学校を創立1990年継続
14京都ノートルダム女子大学カトリック―1961年募集停止(2026年度〜)
15神戸松蔭大学(旧・神戸松蔭女子学院大学)日本聖公会1892年 松蔭女学校―共学化済(2025年4月)
16平安女学院大学日本聖公会1875年 大阪・川口居留地の「エディの学校」(1895年 京都へ)2000年共学化予定(2028年度)
17広島女学院大学プロテスタント1886年 広島女学会(1887年 英和女学校開校)1949年共学化予定(2027年4月)
18仙台白百合女子大学カトリック―(東北唯一の四年制カトリック大学)―共学化予定(2027年4月)

5. 岐路に立つ6校

大学変化時期
恵泉女学園大学学生募集停止(閉学前提)2024年度〜
神戸松蔭大学共学化・改称済2025年4月
京都ノートルダム女子大学学生募集停止2026年度〜
広島女学院大学共学化・「YIC学院大学」へ改称2027年4月
仙台白百合女子大学共学化・「仙台白百合大学」(予定)へ改称2027年4月
平安女学院大学共学化・「京都地域共創大学」(構想中)へ改称2028年度
  • 広島女学院大学は、2026年4月に運営母体が学校法人YIC学院へ引き継がれた

6. まとめ

  • 創立者はさまざま:宣教師、修道会、日本人教育者
  • 現在の道もさまざま:女子大として継続/募集停止/共学化
  • 形は変わっても、女性が学ぶ機会を広げようとした歴史は、各大学の教育理念として受け継がれている

読み方メモ:河井道(かわい みち)/京都地域共創大学(きょうと ちいき きょうそう だいがく)


2026年10月28日水曜日

【キリスト教入門・熟練者の学び直し講座】②旧約聖書の概要 ― 全体の見取り図

 


0. この解説の見取り図

旧約聖書は39の文書からなる大きな書物です。本解説では細部をいったん脇に置き、全体を一つの流れとしてたどります。

部内容範囲
第1部歴史の流れ創世記〜ネヘミヤ記
第2部預言者たち北王国/南王国/捕囚期/捕囚後
第3部主要年代の早見表前1020年頃〜前445年頃

全体を貫く一本の線:揺れ動く人間と、動かない神の誠実


1. 歴史の流れ

(1) 原初史(創世記1–11章)― 人間そのものの物語

  • 天地創造:神が世界と人間(男と女)を創造。人間は「神のかたち」に造られた(創1:26-27)
  • 堕罪と楽園追放:アダムとエバが禁じられた木の実を食べ、エデンの園から追放される(創3章)
  • カインとアベル:人類最初の兄弟殺し(創4章)
  • ノアの洪水:神による世界のリセット。洪水の後、神は二度と滅ぼさないと決意し、虹を契約のしるしとする(創8:21-22、9:8-17)
  • バベルの塔:天に届く塔を建てて名を上げようとする人間の傲慢。神は言葉を乱し、人々を全地に散らす(創11:1-9)

ポイント 洪水の後、人間は変わっていません。変わらない人間に対して、神の側が関わり方を決め直したのです。

(2) 族長物語(創世記12–50章)― 一つの家族の物語

  • アブラハムの召命:故郷を離れよという呼びかけと、祝福の約束(創12:1-3)
  • 祝福は最終的に「地上のすべての民族」に向かう。旧約全体を貫く大きな約束
  • 示された地カナンが、のちの「約束の地」となる
  • アブラハム → イサク → ヤコブ(=イスラエル)→ ヨセフ
  • ヤコブの12人の息子が、イスラエル十二部族の祖となる
  • 兄たちに売られたヨセフがエジプトで高い地位に就き、飢饉に苦しむ一族を救う。一族はエジプトへ移住する

ポイント 族長たちは模範的な人物ではありません。嘘をつき、だまし、争います。失敗を重ねる人間と、約束を取り下げない神。本解説のタイトルの構図が、ここで最もはっきり現れます。

(3) 出エジプトと荒野(出エジプト記〜申命記)

  • エジプトで奴隷となったイスラエルの民。モーセの登場
  • 過越を経て海を渡り、エジプトを脱出する ― イスラエルの信仰の原点
  • シナイ山で十戒と契約(出20章)
  • 契約を結んだそばから、金の子牛を拝む(出32章)
  • 40年の荒野の放浪。モーセは約束の地を目前にして世を去る(申34章)

(4) 約束の地へ(ヨシュア記・士師記)

  • モーセの後継者ヨシュアのもと、カナンに入る
  • 士師記に描かれる繰り返しのパターン:

背く → 圧迫される → 叫ぶ → 士師が立てられる → また背く

  • ギデオン、デボラ、サムソンらの士師によって、民はかろうじて存続する

(5) 王国時代(サムエル記・列王記・歴代誌)

  • 民は「ほかの国々のように」王を求める(サム上8章)。神が王であるという信仰から見れば、ある種の不信でもあった
  • サウル(前1020年頃)→ ダビデ(前1000年頃、エルサレムを都に)→ ソロモン(神殿建設)
  • ソロモンの死後、息子レハブアムの代に、王国は北イスラエルと南ユダに分裂(前930年頃/前922年説もあり)
  • 前722年、北イスラエル王国がアッシリア帝国により滅亡

(6) バビロン捕囚

  • 前597年、第1回捕囚
  • 前587/586年、新バビロニア帝国によりエルサレム陥落。神殿破壊、南ユダ王国滅亡
  • 約束の地・王・神殿をすべて失った民は、神との関係そのものを問い直すことになる
  • 旧約の多くの文書は、捕囚の経験のなかで、あるいはその後にまとめられたと考えられている

(7) 帰還と再建(エズラ記・ネヘミヤ記・エステル記)

年代出来事
前539年ペルシアのキュロス2世がバビロンを征服
前538年キュロスが捕囚民の帰還と神殿再建を許可(エズ1:1-4)
前515年預言者ハガイ・ゼカリヤに励まされ、第二神殿が完成
前5世紀前半エステル:ペルシアに残った離散ユダヤ人を救う(クセルクセス1世の時代)
前458年頃エズラが帰還し、律法に基づく共同体を再建
前445年頃ネヘミヤがエルサレムの城壁を再建

2. 預言者たち

預言者とは:神の言葉を「預かる」者。未来を言い当てる「予言者」ではありません。民が神から離れるとき、弱い者が踏みにじられるとき、国が滅びに向かうとき、歴史の節目ごとに現れて、王や民に語りました。

※ 年代は生没年ではなく、活動時期の目安です。

(1) 北イスラエル王国で活動

預言者活動時期要点
エリヤ前870–850年頃アハブ王の時代。カルメル山でバアルの預言者と対決(王上18章)
エリシャ前850–800年頃エリヤの後継者
ヨナ前780–750年頃ヤロブアム2世の時代(王下14:25)。ニネベへ派遣される
アモス前760–750年頃南ユダのテコア出身で、北で預言。社会の不正を告発
ホセア前750–725年頃北王国滅亡の直前まで、神の変わらない愛を語る

(2) 南ユダ王国で活動

預言者活動時期要点
イザヤ前740–700年頃40章以降は捕囚期以降の別の預言者とする説が有力
ミカ前740–700年頃イザヤと同時代。「公正を行い、慈しみを愛し、へりくだって神と共に歩む」(ミカ6:8)
ナホム前660–612年頃ニネベの陥落(前612年)を預言
ゼファニヤ前630–620年頃ヨシヤ王の時代
エレミヤ前627–585年頃エルサレム陥落を経験。「新しい契約」を語る(エレ31:31-34)
ハバクク前610–600年頃新バビロニアの台頭期。「正しい人は信仰によって生きる」(ハバ2:4)
ヨエル年代不詳前9世紀説から前400年頃説まで幅がある

(3) 捕囚期

預言者活動時期要点
エゼキエル前593–571年頃第1回捕囚でバビロンへ。捕囚民の中で活動。枯れた骨の幻(エゼ37章)
オバデヤ前586年以降エルサレム陥落時のエドムの行動を非難
ダニエル舞台:前605–536年頃成立は前2世紀とするのが通説。ヘブライ語聖書では「諸書」に分類

(4) 捕囚後(帰還後)

預言者活動時期要点
ハガイ前520年神殿再建を急ぐよう励ます。預言の日付はすべてこの年
ゼカリヤ前520–518年頃ハガイと同時期。9–14章は後代とする説あり
マラキ前460–430年頃エズラ・ネヘミヤとほぼ同時代。キリスト教の旧約聖書では最後に置かれる

3. 主要年代の早見表

年代出来事
前1020年頃サウル王即位、王制の成立
前1000年頃ダビデ王、エルサレムを都とする
前930年頃ソロモンの死、王国の南北分裂
前722年北イスラエル王国滅亡(アッシリア)
前597年第1回バビロン捕囚
前587/586年エルサレム陥落、南ユダ王国滅亡
前539年キュロス2世、バビロンを征服
前538年捕囚民の帰還許可
前515年第二神殿の完成
前445年頃ネヘミヤによる城壁再建

必ず覚えたい三つの節目 前722年(北王国滅亡)/前587年(南王国滅亡)/前538年(帰還許可)


4. よくある誤解 ― 確認チェックリスト

よくある誤解正確な理解
バベルの塔は神に破壊された塔の破壊は記されていない。神は言葉を乱し、人々を散らした。建設はそこで途絶えた
王国はソロモンの時代に分裂した分裂はソロモンの死後、息子レハブアムの代
エステルは捕囚期の人物である舞台はペルシア時代(クセルクセス1世、前5世紀前半)。帰還許可の後も、ペルシアに残った離散ユダヤ人の物語
キュロスは前537年にバビロンを滅ぼしたバビロン征服は前539年、帰還許可は前538年
帰還後、首都を再建し、それから神殿を再建した神殿の完成(前515年)→ エズラ(前458年頃)→ ネヘミヤの城壁再建(前445年頃)の順
預言者の年代は生没年である生没年はほとんど分からない。示されるのは活動時期の目安
アモスは北王国の人である南ユダのテコア出身で、北に出向いて預言した
ダニエルは南ユダの預言者である物語の舞台は捕囚期、成立は前2世紀とするのが通説。ヘブライ語聖書では預言書ではなく「諸書」
「預言」と「予言」は同じ預言とは神の言葉を「預かる」こと。未来を言い当てることが本質ではない

5. まとめと復習の問い

  1. 人間は何度も神から離れる。 堕罪から始まり、荒野で、約束の地で、王国の時代に。旧約聖書は人間の失敗の歴史を隠さずに描く。
  2. それでも神は約束を捨てない。 アブラハムへの約束は、洪水の後も捕囚の後も取り下げられなかった。これが「揺れ動く人間と、動かない神の誠実」の意味である。
  3. 預言者は歴史の節目に語った。 彼らの言葉は、それぞれの時代の出来事と重ねて読むとき、はじめて本当の重みを持つ。

復習のための問い

  • 問1 洪水物語の前後(創6:5-7と8:21-22)で、神の人間への関わり方はどう変わっているか。人間の側に変化はあったか。
  • 問2 士師記に繰り返し現れるパターンを四つの段階で説明せよ。
  • 問3 前722年、前587/586年、前538年は、それぞれ何が起きた年か。
  • 問4 エステル記の舞台はいつ、どこか。「捕囚期の物語」という説明のどこが不正確か。
  • 問5 「預言者」と「予言者」の違いを説明せよ。

主要な聖書箇所

創1:26-27/3章/4:1-16/6:5-7/8:21-22/9:8-17/11:1-9/12:1-3/32:29/37–50章 | 出20:1-17/32章 | 民14:33-34 | 申5:6-21/34章 | 士2:11-19 | サム上8:5, 20 | 王上12章/18章 | 王下14:25/17:6/24:10-16/25:1-21 | エズ1:1-4/6:14-15 | エレ31:31-34 | エゼ37:1-14 | ミカ6:8 | ハバ2:4

【キリスト教入門・熟練者の学び直し講座】③天地の創造

 


  • テキスト:創世記 1章1節〜2章3節(新共同訳)

今日のねらい

  1. 六日間の創造に込められた構造をつかむ。
  2. この記事が捕囚の民に語られた言葉であることを知る。
  3. すべての人が**「神のかたち」**に造られた意味を考える。

1. 読む前に

  • 科学の教科書ではない:この記事は、世界が「どのように」できたかではなく、「誰が」「何のために」造ったかを語る信仰告白です。
  • 成立背景:バビロン捕囚(前6世紀)。国と神殿を失った民が、天体を神々とあがめる国と、その神話(エヌマ・エリシュ)の中で告白した信仰です。

2. 六日間の構造

前半三日で「場」を造り、後半三日でそこを「満たす」構成になっています。

「場」を造る(形を与える)そこを「満たす」(空しさを満たす)
第一の日 光第四の日 光る物(太陽・月・星)
第二の日 大空と水第五の日 鳥と水の生き物
第三の日 陸地と植物第六の日 動物と人
第七の日 安息

1:2の「混沌」の原語はトーフー・ワ・ボーフー(形なく、空しい)です。前半三日で形を与え、後半三日で満たすことが、この混沌への応答になっています。

3. 前半三日:混沌に形が与えられる

1:1-2 始まりは混沌と闇

地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。

  • 「深淵」は、地を覆う原始の大水です。古代人にとって、海は魔物の住む未知の世界でした。
  • 本文は「無から」とは明言せず、混沌と闇に秩序(コスモス)が与えられる様を描いています。
    • ※「無からの創造」は後に確立した教理です(二マカバイ7:28、ロマ4:17、ヘブライ11:3)。

1:3 言葉による創造

神は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。

  • バビロニア神話では、神々の戦いで世界ができます。聖書では、神の言葉だけで世界が成ります(ヨハネ1:1-3)。
  • 闇と混沌は不条理と絶望の象徴、光は神の秩序と希望の象徴と読めます。捕囚の民にとって、闇は自分たちの現実でした。

1:4-5 第一の日:夜から朝へ

夕べがあり、朝があった。第一の日である。

  • 朝から夜へではなく、夜から朝へ進みます。絶望から希望へ、という流れです。
  • ユダヤの一日は日没から始まります。闇も「夜」と名づけられ、神の秩序の中に置かれます。

1:6-8 第二の日:大空が水を分ける

  • 大空が上の水と下の水を分けるのは、古代の人々が思い描いた宇宙の姿です。

1:9-13 第三の日:陸地と植物

  • 水が集められて海と陸ができ、陸に草と果樹が芽生えます。これで「場」が整います。
  • 聖書が「生き物」と呼ぶのは第五の日からで、植物は含まれません。植物は生き物を養う備えです。

4. 後半三日:場が満たされる

1:14-19 第四の日:太陽も月も神ではない

神は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。

  • 本文は「太陽」「月」と呼ばず、**「光る物」**と呼んでいます。
  • バビロンでは天体は神々でした。聖書では、季節や日や年を知らせる被造物にすぎません。

1:20-23 第五の日:怪物さえも祝福される

  • 水の生き物と鳥が造られます。「大きな怪物」(レビヤタン、ラハブなど)も含まれます。
  • 神話では神と戦う怪物も、ここでは神の被造物です。
  • 「産めよ、増えよ」は、聖書で最初の祝福です。

1:24-25 第六の日:陸の動物

  • 家畜、這うもの、地の獣が造られます。
  • 「這うもの」は、爬虫類・虫・小動物など、地を這う生き物全般です。蛇もここに含まれます。

5. 人間の創造

1:26 「我々」とは誰か

我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。

主な説明は次の三つです。

  1. 天上の会議(御使いたち)への呼びかけ
  2. 熟慮の複数(「さあ、造ろう」)
  3. 三位一体の暗示(後のキリスト教による読み方)

1:27 すべての人が「神のかたち」

神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された。

  • 古代では、王だけが「神の像」とされました。
  • 聖書では、男も女も、すべての人が神のかたちです。これが人間の尊厳の根拠になります。
  • 「男と女」は拘束事項ではなく、基本デザインと読みたいところです(解釈は分かれます)。

1:28-30 「支配せよ」の意味

産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。

  • 「支配せよ」「従わせよ」は、原語でも強い言葉です。
  • 神のかたちとして、神に代わって世話し、管理する務めと読むことができます(2:15「耕し、守る」)。
  • 29-30節では、人にも動物にも食物は植物です。ここでの「支配」は、殺して食べることを含みません。
  • 日本でよく言われる「自然との共生」とは、発想の出発点が違います。

6. 極めて良かった、そして安息

1:31 神の全肯定

見よ、それは極めて良かった。

  • それまでの「良し」に対して、最後は「極めて良かった」と言われます。造られた世界への全面的な肯定です。

2:1-3 第七の日:創造の頂点は安息

第七の日を神は祝福し、聖別された。

  • 創造の頂点は、人間ではなく安息です。
  • 第七の日だけ、「夕べがあり、朝があった」の結びがありません。
  • 安息日の由来です(出エジプト20:11)。期間は金曜の日没から土曜の日没までです。
  • 神殿を失った捕囚の民にとって、安息日は「時間の中の聖所」でした。

まとめ:絶望から、希望へ

  • 神は、混沌に秩序を与え、空しいところを満たされます。
  • すべての人は、「神のかたち」に造られた尊い存在です。
  • 世界は「極めて良かった」と肯定されています。
  • 創造の頂点は、安息です。

参考:関連聖句

事項箇所
無からの創造二マカバイ7:28、ロマ4:17、ヘブライ11:3
言葉による創造ヨハネ1:1-3
海の怪物イザヤ27:1、詩編74:13-14(レビヤタン)
耕し、守る創世記2:15
安息日の根拠出エジプト20:11(創造)、申命記5:15(出エジプトの解放)

【キリスト教史解説】ルターの宗教改革三大文書(1520年)

 


0. 背景

  • 1520年6月15日 教皇レオ10世が勅書『エクスルゲ・ドミネ』(Exsurge Domine)を発布
    • ルターに教説の撤回を要求し、従わなければ破門すると警告
  • 三大文書は、この緊迫した状況のなかで相次いで刊行された
著作刊行言語主な読者
①『ドイツのキリスト者貴族に与える書』1520年8月ドイツ語世俗の諸侯・貴族
②『教会のバビロン捕囚について』1520年10月ラテン語神学者
③『キリスト者の自由』1520年11月ドイツ語・ラテン語一般のキリスト者

1. 『ドイツのキリスト者貴族に与える書』(1520年8月)

原題:An den christlichen Adel deutscher Nation von des christlichen Standes Besserung

改革を阻む「三つの城壁」

  1. 霊的権力が世俗権力に優越するという主張
    • 聖職者は本質的に世俗の権力者より上位にあるとする
  2. 聖書解釈権の独占
    • 聖書を正しく解釈できるのは教皇だけだとする
  3. 公会議招集権の独占
    • 公会議を招集できるのは教皇だけだとする
    • そのため、教皇自身を正すための公会議が開かれない

城壁を崩す根拠:万人祭司

  • 洗礼を受けたキリスト者は皆、霊的な身分において等しく祭司である
  • したがって、世俗の諸侯や貴族も教会改革の担い手となるべきである

→ 教会制度と政治権力の関係を問い直した、宗教改革の「改革綱領」


2. 『教会のバビロン捕囚について』(1520年10月)

原題:De captivitate Babylonica ecclesiae praeludium

題名の意味

  • 旧約のバビロン捕囚になぞらえた比喩
  • 教会の秘跡(とくに聖餐)が、教皇権・ローマ教皇庁のもとで本来の姿から引き離され、囚われているという意味
  • ※1520年の時点では、まだ「カトリック対プロテスタント」という構図はない
  • ※中世の「教皇のバビロン捕囚」(アヴィニョン教皇庁、1309〜1377年)の言い方を逆転させている

秘跡の再検討

  • 中世の七秘跡:洗礼・堅信・聖餐・悔悛・終油・叙階・婚姻
  • 著作の冒頭:洗礼・悔悛・聖餐の三つを挙げる
  • 議論の過程:悔悛を独立した秘跡とすることに疑問を示す
  • 最終的な立場:洗礼と聖餐が中心

聖餐の「三重の捕囚」

  1. 一種陪餐:信徒にはパンだけを与え、杯を与えない慣行
  2. 化体説:パンとぶどう酒の実体がキリストの体と血の実体に変わるとする、アリストテレス哲学に基づく説明
    • ※ルターはキリストの現臨そのものは否定していない
    • 現臨を認めたうえで、パンとぶどう酒もそのまま残ると考えた
  3. ミサの犠牲的・功績的理解:ミサを人間が神に差し出す善行・犠牲とみなす理解
    • ルターにとってミサは、神の約束を信仰によって受け取るもの

→ 秘跡制度とミサ理解を根底から問い直した、三文書のなかで最も急進的な文書


3. 『キリスト者の自由』(1520年11月)

原題:Von der Freiheit eines Christenmenschen(ラテン語版:Tractatus de libertate christiana)

  • ラテン語版:教皇レオ10世への公開書簡を添えて教皇に献呈
  • ドイツ語版:ツヴィッカウの市長ヘルマン・ミュールプフォルトに献呈

冒頭の二つの命題

キリスト者はすべてのものの上に立つ自由な主人であって、誰にも服さない。

キリスト者はすべてのものに仕える僕であって、誰にでも服する。

信仰と愛による説明

神 ──(信仰:恵みを受け取る)──▶ キリスト者 ──(愛:仕える)──▶ 隣人
  • 信仰において自由:救いは行いではなく信仰によって受け取るので、救いを得るために功績や外的な制度に縛られない
  • 愛において僕:信仰によって自由にされた者は、自分のためだけでなく、隣人に仕えて生きる

→ 信仰義認・キリスト者の自由・隣人への奉仕を一つに結びつけた、ルター神学の代表的文書


4. 三大文書の比較と意義

著作主題
① 貴族に与える書教会権威の構造を批判し、社会的・政治的改革を呼びかける
② バビロン捕囚秘跡制度とミサ理解を神学的に問い直す
③ キリスト者の自由信仰による自由と、愛による隣人への奉仕を示す

展開: 制度の批判 → 秘跡の再検討 → 信仰生活の積極的な提示


5. その後の展開

年月日出来事
1520年12月10日『エクスルゲ・ドミネ』を教会法の書物などとともに焼き捨てる
1521年1月3日勅書『デチェト・ロマヌム・ポンティフィケム』(Decet Romanum Pontificem)により正式に破門
1521年4月ヴォルムス帝国議会に召喚され、著作の撤回を拒否

まとめ

  • 1520年、ルターの改革思想が明確な形をとった
  • 教会制度・秘跡・信仰生活の三方向から、改革の理念が示された
  • 同時に、ローマ教会との決定的な決裂へ向かう転換点となった

1-0 トップページ(目次)

1-1 新宗教・新興宗教解説    オウム真理教、創価学会、真如苑など、新宗教の解説動画 1-2 キリスト教解説    キリスト教学、キリスト教史、教会史)や、神学、聖書文書など 1-3 説教や聖書研究をする信徒のための聖書注解    教会などのグループで、説教や奨励、聖書研究会...