2024年5月2日木曜日

テルトゥリアヌス

テルトゥリアヌス Quintus Septimius Florens Tertullianus ca. 160 ‐ after 220 CE *


【要約】

西方教会最初の(ラテン)教父、護教家。マルキオン、グノーシス主義に対する論駁書を著す。ペルソナ概念、史上最初となる三位一体論的表現は後の正統神学に影響。教会の職制の権威を主張し、初期カトリシズム的な職制論の基礎に。

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【本文】

 西方教会最初の教父にして護教家(ラテン教父)。北アフリカのカルタゴ出身。修辞学と法律を学び、ローマで法律家となる。ca. 195 CEに回心し、カルタゴに帰国。マルキオン、プラクセアス、グノーシス主義等の異教的思想に対抗して論陣を張り、対異教的な著作を著した。後に、キリスト者として厳格な生活の在り方を求め、終末思想と禁欲主義的生活を志向するモンタヌス主義に傾倒したが、そこからも離反したと推測されている。


 思想

 ギリシャ哲学を「異端の父」としつつも、ギリシャ哲学的霊魂観やストア学派的な思考の影響を受けており、例えばこれにより肉体と霊の二元論的な彼の人間論が構築されている。しかし、基本的にテルトゥリアヌスは正典的文書(聖書)を基盤としつつ、そこから三位一体論やキリスト論、救済史を展開し、その過程で生まれたペルソナ概念、経綸の思考は後の正統哲学に摂取されるところとなった。


 また、史上初めての三位一体論の萌芽が現れていると言われている『プラクセアス反駁』において、父が子となったというような単神論的思想に対してテルトゥリアヌスは反論を試みており、その中で「三位一体」や「位格」「実体」等のテクニカルタームを彼は使用している。これが、後の三位一体論的用語の始まりとなった。


 テルトゥリアヌスはまた、初代教会における霊的権威を継承しつつ同時にこれに代わるものとしての職制の権威を主張し、これは後の初期カトリシズム的な職制論の基礎となり、西方教会的な教会論の基礎をもたらした。また、元法律家としての知識を生かし、救済論を法律的な観点から組織的に論じた。

 なお、『キリストの肉について』における「キリストは肉となった。これは愚かであるが故に信じ得る。」という言葉は、credo, quia absurdum est「不合理なるが故に我信ず」の典拠とされる。


 補足

 テルトゥリアヌスは、受難者イエス・キリストが異教世界のプロメテウスにおいて予示されていると述べている。


 主要著作

『護教論』 カルタゴで執筆。言語はラテン語。

『プラクセアス反駁』

『マルキオン反駁』

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