2024年1月19日金曜日

士師記7章1-7節「ギデオン」(2013年9月8日)

  

 今回と次回は、ギデオンとサムソンという二人の「士師」を取り上げます。イスラエルは約束の地をついに与えられはしたものの、その歩みは常に外敵におびやかされ、イスラエル自身もまた異民族の神々に惹かれて背信を繰り返し、さらにはイスラエル内部での部族同士の抗争もあり、まさしく混沌の時代をさまよいました。そうした中で、神によってイスラエルに遣わされた救世主のような存在こそ、「士師」たちに他なりません。


 士師とは

 この「士師」とは、イスラエルが約束の地カナンに定着してから、紀元前11世紀後半における王国樹立に至るまでの時代、イスラエル十二部族を導いた指導者たちを指しています。その特別な賜物、特に軍事的才能を発揮して他民族によって圧迫されていたイスラエルをたびたび救ったことから「救助者」とも呼ばれます。また、士師記に登場する士師たちの中で、オテニエル、エホデ、デボラ、バラク、ギデオン、エフタ、サムソンの7人については、政治的・指導的働きのみならず戦闘行為にも従事した記録があることから、「大士師」とも呼ばれることがあります。

 ちなみに、士師記においては<イスラエルの背信→困窮→士師による救助→再び背信>という一連の流れを一つのサイクルとして、これが周期的に繰り返されるという歴史観が特徴的です。


 ギデオン

 「切る人」という意味を含む名前を持つギデオンは、イスラエル一二部族のマナセ出身で、士師たちの中でも最も華々しい活躍をした模範的な英雄です。後述するように、選び抜いたわずか300名の精鋭部隊を率いて大軍に奇襲をかけ、大勝へと導きました。しかし、当初はそんなギデオンも、力と勇気と決断力とはおよそ程遠い人間でした。長らく苦しめられていたところのミディアン人の襲撃を恐れて、隠れて農作業をしていたところに、突如として召命の言葉が告げられます。

 「勇者よ、主はあなたと共におられます」(士師記6:12)

 隠された本質と将来の特性を見抜いた神の招きの言葉に対しても、ギデオンは、「自分の部族は一番弱い、自分も一番弱い・・・・・・」と弱気な発言を繰り返すばかりでした。しかし、主は彼に不思議な現象を幾度も示し、主が共におられる事実を彼に根気よく伝えていきます。これにより、ギデオンは、町に蔓延していた異教崇拝の祭壇(バアル神)と像(アシェラ女神像)を壊すようにという主のご命令を受けて、身の危険も顧みずそれを実行し、そして、士師として立っていきます。特に、ギデオンが士師となる最終決断に際して、主は彼の求めに応じて二度も不思議な現象を起こしました(士師記6:36-40)。兵数300でミディアンの大軍に臨む時もそうでしたが(7:10)、向こう見ずではないにしても臆病な気質を持つギデオンを、再三再四励まされる主のお姿が、ギデオン物語においては特徴的です。


 わずか兵力300による奇跡の勝利

 ミディアン軍に対してギデオンが三万を超える自陣営を敷き終えると、主は彼に言われました。「あなたの率いる民は多すぎるので、ミディアン人をその手に渡すわけにはいかない。渡せば……自分の手で救いを勝ち取ったと言うであろう。」(7:2)。そこで彼はまず、恐れを抱いている兵に帰るよう指令を出します。次に、残り1万の兵に対して、主は彼に水辺に行かせるよう指示します。そして、水辺での給水時においても迅速な行動に移行できるよう周囲への警戒を怠らなかった精鋭300人のみを選ぶよう彼に命じました。「手から水をすすった三百人をもって、わたしはあなたたちを救い、ミディアン人をあなたの手に渡そう。」(7:7)。

 こうしてギデオンは、300人の部隊を100人ずつの小隊にわけ、各自に角笛と松明、松明を隠すための水瓶を持たせます。そして、闇夜を利用して各部隊を敵に気づかれることなく配置し、タイミングを見計らって一気に奇襲をかけ、敵陣を混乱の渦に突き落とします。やがて同士討ちが始まり、イスラエル軍は勝利しました。


 ギデオンのその後

 ミディアンに対する勝利の後、イスラエルの人々はギデオンに彼らの統治者(王)となるよう嘆願しましたが、まことの統治者は神のみであることを告げて、王制に対して否定的な発言を残しています(8:22-23)。イスラエルの平和は、ギデオンの存命中40年間続きました(8:28)。しかし、ギデオンが高齢のために逝去すると、すぐにイスラエルの人々は偽りの神バアル・ベリトを崇拝し、神を忘れました(8:29-35)。


 まとめ

 ギデオンは当初、実に弱い人間でした。自分でもそれを認めていました。しかし主なる神は、彼の隠された特性と、将来の働きを見て取り、彼を立派な戦士として育て上げていきました。主とギデオンとのやり取りには、自らへりくだって人を導く神の謙遜と愛が示されています。神の愛こそが、真の勇者を育てるのです。  茨木春日丘教会 大石健一


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