2024年2月2日金曜日

ルツ記 「ルツ」(2013年9月22日掲載)

ルツ記 「ルツ」(2013年9月22日掲載)


 

今回の主題は、『ルツ記』の主人公であり、その書名ともされている「ルツ」という女性です。ルツ記は、旧約聖書における「諸書」という分類における一書で、ユダヤでは過越祭から50日目の五旬節に朗読される書でもあります。内容は士師時代における一家族の物語で、そのスポットライトはルツに当てられています。


 ルツ記の主題

 飢饉という災い、異邦の地への移住という苦渋の決断、エリメレク、息子たちの死という悲しみの経験、ナオミの優しさ、ルツの決断、ボアズの存在、これら一連の出来事が神のご計画の中で一つに結び合わされ、イスラエルを代表する人物である王ダビデの誕生へと至ったという、神の摂理が今回の物語の秘められた主題です。ルツ記において、神がご自身を現され、目に見える形で行動されるということは一切ありませんが、歴史を導かれている主なる神の存在が前提とされています。


 エリメレクの息子との結婚、そして息子たちの死

 ユダのベツレヘム出身でエフラタ族に属し、家長であったエリメレクは、飢饉のためにやむなくモアブという異邦人の地に移住します。しかし、二人の息子マフロンとキルヨンを残して死んでしまいます。残された息子たちはモアブの女性と結婚し、その時に妻となった人こそ「ルツ」に他なりません。ところが、結婚後まもなく、息子たちは死亡します。そこでナオミは、マフロンの妻オルパとルツの二人に、それぞれの実家へ帰るよう提案し、オルパはそれを受け入れます。しかし、ルツは自分の故郷のモアブに留まる選択肢を捨てて、義母ナオミと共に、ナオミの故郷であるイスラエルに移住し、同地で永住することを決意します。その際のルツの言葉は、義母への愛と神への信仰をたたえた実に美しいものです。

「ルツは言った。『あなたを見捨て、あなたに背を向けて帰れなどと、そんなひどいことを強いないでください。わたしは、あなたの行かれる所に行き、お泊まりになる所に泊まります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神。」(ルツ記1:16)


 ベツレヘムへの帰還

 ナオミとルツは旅を続け、ベツレヘムに帰還します。その折りにナオミが発した言葉には、彼女の苦悩がにじみ出ています。「ナオミは言った。『どうか、ナオミ(快い)などと呼ばないで、マラ(苦い)と呼んでください。』」(1:20)。ナオミには、夫エリメレクの一族で有力な親戚であるボアズという人物がいました(2:1)。ルツは、ボアズの所有する畑で落ち穂拾いをすることにします。ボアズはルツの身の上を耳にして、ルツに好意を示し、親切にします。するとナオミは、ボアズが親戚であり、レビラート法によってルツを妻として迎えることができる人物であることに改めて気づくのです。


 レビラート婚

 当時、レビラート婚(またはレビレート婚・逆縁婚)という慣習がありました。これは、ある妻の夫が死亡した場合、一族の存続や財産の喪失防止のため、夫の兄弟がその妻と結婚するという制度です。ナオミは、この制度によってルツがボアズと結婚できないかと考えます。そして、人々に知られぬよう夜半にボアズのもとを訪れて、今後のことについて彼と相談するよう、ルツに命じるのです。


 ボアズとルツとの結婚

 休んでいる折りにルツの存在に気づいたボアズは、すぐに彼女の意図と誠意を悟ります。ただ、ボアズよりも優先してレビラート婚の責任を果たすべき人物が他にいたために、即答を避けます。ボアズは早速、その優先順位の高い人と交渉し、ナオミの所有する土地の買い上げを打診するという手続きを踏んだ上で、土地の取得と共にルツを妻として迎えることに成功したのでした。かくして、二人は結婚し、ルツはやがて男子を出産し(4:13)、その子はオベドと名づけられました(4:17)。このオベドは、ダビデの父エッサイの父となりました。ダビデへと至るペレツに始まる系図が、4:18-22に記載されています。


 まとめ

 ルツは、神の摂理の中で、ダビデの曾祖母とされました。ルツは元々モアブ人で、イスラエルの民から見れば異邦人です。そんな異邦人のルツの血が、ダビデへと至る血筋に入っているということは、やがて神の救いが異邦人を含む全世界へと展開されていくことを暗示しているようです。狭いイスラエル選民主義に留まってはいけないというメッセージも込められていると思われます。

 「わたしは、あなたの行かれる所に行き、お泊まりになる所に泊まります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神。」(1:16)。この言葉に豊かに表された、ルツという無名の女性の真摯な信仰を主はお用いになって、神の救いの歴史を編み上げられました。私たちも、自分の信仰の決断を大切にしたいと思います。


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