- テキスト:創世記 1章1節〜2章3節(新共同訳)
今日のねらい
- 六日間の創造に込められた構造をつかむ。
- この記事が捕囚の民に語られた言葉であることを知る。
- すべての人が**「神のかたち」**に造られた意味を考える。
1. 読む前に
- 科学の教科書ではない:この記事は、世界が「どのように」できたかではなく、「誰が」「何のために」造ったかを語る信仰告白です。
- 成立背景:バビロン捕囚(前6世紀)。国と神殿を失った民が、天体を神々とあがめる国と、その神話(エヌマ・エリシュ)の中で告白した信仰です。
2. 六日間の構造
前半三日で「場」を造り、後半三日でそこを「満たす」構成になっています。
| 「場」を造る(形を与える) | そこを「満たす」(空しさを満たす) |
|---|---|
| 第一の日 光 | 第四の日 光る物(太陽・月・星) |
| 第二の日 大空と水 | 第五の日 鳥と水の生き物 |
| 第三の日 陸地と植物 | 第六の日 動物と人 |
| 第七の日 安息 |
1:2の「混沌」の原語はトーフー・ワ・ボーフー(形なく、空しい)です。前半三日で形を与え、後半三日で満たすことが、この混沌への応答になっています。
3. 前半三日:混沌に形が与えられる
1:1-2 始まりは混沌と闇
地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。
- 「深淵」は、地を覆う原始の大水です。古代人にとって、海は魔物の住む未知の世界でした。
- 本文は「無から」とは明言せず、混沌と闇に秩序(コスモス)が与えられる様を描いています。
- ※「無からの創造」は後に確立した教理です(二マカバイ7:28、ロマ4:17、ヘブライ11:3)。
1:3 言葉による創造
神は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。
- バビロニア神話では、神々の戦いで世界ができます。聖書では、神の言葉だけで世界が成ります(ヨハネ1:1-3)。
- 闇と混沌は不条理と絶望の象徴、光は神の秩序と希望の象徴と読めます。捕囚の民にとって、闇は自分たちの現実でした。
1:4-5 第一の日:夜から朝へ
夕べがあり、朝があった。第一の日である。
- 朝から夜へではなく、夜から朝へ進みます。絶望から希望へ、という流れです。
- ユダヤの一日は日没から始まります。闇も「夜」と名づけられ、神の秩序の中に置かれます。
1:6-8 第二の日:大空が水を分ける
- 大空が上の水と下の水を分けるのは、古代の人々が思い描いた宇宙の姿です。
1:9-13 第三の日:陸地と植物
- 水が集められて海と陸ができ、陸に草と果樹が芽生えます。これで「場」が整います。
- 聖書が「生き物」と呼ぶのは第五の日からで、植物は含まれません。植物は生き物を養う備えです。
4. 後半三日:場が満たされる
1:14-19 第四の日:太陽も月も神ではない
神は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。
- 本文は「太陽」「月」と呼ばず、**「光る物」**と呼んでいます。
- バビロンでは天体は神々でした。聖書では、季節や日や年を知らせる被造物にすぎません。
1:20-23 第五の日:怪物さえも祝福される
- 水の生き物と鳥が造られます。「大きな怪物」(レビヤタン、ラハブなど)も含まれます。
- 神話では神と戦う怪物も、ここでは神の被造物です。
- 「産めよ、増えよ」は、聖書で最初の祝福です。
1:24-25 第六の日:陸の動物
- 家畜、這うもの、地の獣が造られます。
- 「這うもの」は、爬虫類・虫・小動物など、地を這う生き物全般です。蛇もここに含まれます。
5. 人間の創造
1:26 「我々」とは誰か
我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。
主な説明は次の三つです。
- 天上の会議(御使いたち)への呼びかけ
- 熟慮の複数(「さあ、造ろう」)
- 三位一体の暗示(後のキリスト教による読み方)
1:27 すべての人が「神のかたち」
神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された。
- 古代では、王だけが「神の像」とされました。
- 聖書では、男も女も、すべての人が神のかたちです。これが人間の尊厳の根拠になります。
- 「男と女」は拘束事項ではなく、基本デザインと読みたいところです(解釈は分かれます)。
1:28-30 「支配せよ」の意味
産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。
- 「支配せよ」「従わせよ」は、原語でも強い言葉です。
- 神のかたちとして、神に代わって世話し、管理する務めと読むことができます(2:15「耕し、守る」)。
- 29-30節では、人にも動物にも食物は植物です。ここでの「支配」は、殺して食べることを含みません。
- 日本でよく言われる「自然との共生」とは、発想の出発点が違います。
6. 極めて良かった、そして安息
1:31 神の全肯定
見よ、それは極めて良かった。
- それまでの「良し」に対して、最後は「極めて良かった」と言われます。造られた世界への全面的な肯定です。
2:1-3 第七の日:創造の頂点は安息
第七の日を神は祝福し、聖別された。
- 創造の頂点は、人間ではなく安息です。
- 第七の日だけ、「夕べがあり、朝があった」の結びがありません。
- 安息日の由来です(出エジプト20:11)。期間は金曜の日没から土曜の日没までです。
- 神殿を失った捕囚の民にとって、安息日は「時間の中の聖所」でした。
まとめ:絶望から、希望へ
- 神は、混沌に秩序を与え、空しいところを満たされます。
- すべての人は、「神のかたち」に造られた尊い存在です。
- 世界は「極めて良かった」と肯定されています。
- 創造の頂点は、安息です。
参考:関連聖句
| 事項 | 箇所 |
|---|---|
| 無からの創造 | 二マカバイ7:28、ロマ4:17、ヘブライ11:3 |
| 言葉による創造 | ヨハネ1:1-3 |
| 海の怪物 | イザヤ27:1、詩編74:13-14(レビヤタン) |
| 耕し、守る | 創世記2:15 |
| 安息日の根拠 | 出エジプト20:11(創造)、申命記5:15(出エジプトの解放) |