レジュメ
0. 概要
- オランダの改革派神学者ヤコブス・アルミニウス(1559/60–1609)の神学に由来する、プロテスタントの神学的立場
- 神の予定と選び、人間の信仰、神の恩恵の関係をめぐり、カルヴァン主義の厳格な予定説解釈(とくにベザらの堕落前予定説)に異議を唱えた
- 改革派の外からの批判ではなく、改革派内部の論争である
1. アルミニウスとゴマルスの論争
- 1603年 フランシスクス・ユニウスの後任として、ライデン大学神学教授に就任
- 同僚フランシスクス・ゴマルス(1563–1641)と、神の選びと人間の信仰の関係をめぐって論争
- 1609年 アルミニウス没 → 論争は支持者たちに引き継がれる
| ゴマルス側 | アルミニウス側 | |
|---|---|---|
| 立場 | 厳格な予定説(堕落前予定説) | 恩恵と人間の応答の関係を重視 |
| 選び | 神の定めが信仰に先立つ | 予知された信仰と結びつく |
| 恩恵 | 抵抗できない | 人間は拒むことができる |
※ アルミニウスも、救いが神の恩恵によることは否定していない。
2. 「抗議書」(Remonstrance, 1610年)
- 提出先:ホラント州議会
- 起草:ヨハネス・ウイテンボハールト/署名:40名余りの牧師
- 文書名から「レモンストラント派(Remonstrants)」と呼ばれる
抗議書の5つの論点
- 選び:神の選びは、あらかじめ知られた信仰と結びつく
- 贖罪:キリストの死はすべての人のため(贖罪の普遍性)
- 恩恵:堕落した人間が善をなすには、神の恩恵が不可欠
- 抵抗:恩恵には抵抗しうる
- 堅忍:否定はせず、聖書に基づくさらなる検討が必要として結論を保留
基本的な特徴:救いは神の恩恵による。しかし、人間の信仰的応答も重んじる。
3. 神学論争から政治対立へ
- 1611年 反レモンストラント派が、ハーグ会談で「反抗議書」(Counter-Remonstrance)を提出
- 神学的対立が、オランダ共和国の権力闘争・教会と国家の関係をめぐる対立と結びつく
- ホラント州法律顧問 オルデンバルネフェルト:レモンストラント派を擁護
- 総督 マウリッツ:反レモンストラント派を支持
- マウリッツが実権を握る → 1619年、オルデンバルネフェルト処刑、フーゴー・グロティウス投獄
4. ドルト教会会議(1618–1619年)
- レモンストラント派の教説を退け、改革派正統主義の立場から予定と救いの教理を定式化
- 指導者シモン・エピスコピウスらは、正式な議員ではなく被召喚者として出席
- 1619年1月、退場を命じられる
- 会議後:牧師約200人が罷免、うち約80人が国外追放
5. レモンストラント派のその後
- 1619年 亡命先のアントウェルペンでレモンストラント兄弟団を結成
- 1625年 マウリッツ没 → 活動が次第に黙認される
- 1634年 アムステルダムに神学校を開設 → 独自の教会共同体として存続
- 1795年 バタヴィア革命 → 改革派教会の特権的地位の否定、諸宗派の法的平等へ
- 1796年 政教分離の宣言
6. 後世への影響
- 17世紀イングランド:ロード派の国教会聖職者、一般バプテストにアルミニウス主義的傾向
- 18世紀 メソジスト運動:ジョン・ウェスレーは「先行的恩恵」と人間の応答を重視し、アルミニウス主義と深い親和性を示した
- 1778年 ウェスレーが『アルミニアン・マガジン』を創刊
7. ソッツィーニ主義との関係(注意点)
- 17世紀、レモンストラント派と反三位一体派(ソッツィーニ主義など)との間に思想的交流があった
- そのため「ソッツィーニ主義者」との非難をしばしば受けた
- しかし、アルミニウス自身・初期の抗議書は三位一体論を否定していない → 両者は区別して理解する
8. 年表
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1603 | アルミニウス、ライデン大学神学教授に就任 |
| 1609 | アルミニウス没 |
| 1610 | 「抗議書」をホラント州議会に提出 |
| 1611 | ハーグ会談で「反抗議書」提出 |
| 1618–19 | ドルト教会会議 |
| 1619 | オルデンバルネフェルト処刑/レモンストラント兄弟団結成 |
| 1625 | マウリッツ没 |
| 1634 | アムステルダムに神学校開設 |
| 1778 | ウェスレー『アルミニアン・マガジン』創刊 |
| 1795 | バタヴィア革命 |
| 1796 | 政教分離の宣言 |
9. まとめ
- 改革派内部の、予定説をめぐる論争から生まれた
- 恩恵を前提としつつ、人間の信仰的応答を重視する
- ドルト教会会議で退けられたが、独自の教会共同体として存続した
- イングランドの諸潮流やメソジスト運動など、後世に大きな影響を与えた
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