『十二族長の遺訓』
『十二族長の遺訓』は、形式的には創世記49章におけるヤコブの遺言を踏襲し、ヤコブの十二人の子らがそれぞれ自らの子孫(場合によっては兄弟)に対して遺言を語るという構成を採っている。
本文書では、創世記に記されている出来事への言及が随所に見られる一方、ヨベル書にのみ伝えられている伝承にも触れられており、複数の聖書外伝承が統合されていることがうかがえる。語りの形式は、各族長自身による直接話法であり、物語全体は連続する遺言集として構成されている。なお、ヨセフを除く十二族長の遺体は、彼ら自身の遺言に従ってヘブロンの洞窟に葬られたとされる。
本文書を構成する各遺言の配列は、ほとんどの写本において、族長たちの母の系譜――すなわちレア、ビルハ、ジルパ、ラケル――の順序に従っており、創世記的伝統との整合性が意識されている。また、一部の写本では、各族長名を冠した文書の表題に、その内容を要約する主題句が付加されている。
伝承史的に見ると、本書にはマカベア王朝およびハスモン王朝を支持する思想的要素、クムラン共同体に代表されるエッセネ派的要素、さらには後代のキリスト教的編集を思わせる要素が混在している。この多層的性格から判断して、『十二族長の遺訓』には、マカベア朝・ハスモン朝期、さらにはクムラン共同体の成立以前に遡る原型的伝承が存在していたと考えられる。
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