コラム 1世紀のユダヤにおける偽メシアの一覧ーーメシア僭称者たち。
イエス時代の1世紀のユダヤにおいて、自らをユダヤにおいて到来が待ち望まれていたところのメシアと僭称した偽メシア(ψευδόχριστοι、偽キリスト)」は、マタイ福音書24:5, 11, 24においても言及されている。同時代のユダヤ人歴史家ヨセフスに基づき、代表的な偽メシアたちを以下に列挙する。
1. テウダ(Θευδᾶς)
参照、使徒言行録 5:36「以前にもテウダが、自分を何か偉い者のように言って立ち上がり、その数四百人くらいの男が彼に従ったことがあった。彼は殺され、従っていた者は皆散らされて、跡形もなくなった。」
- ガマリエルの演説において言及されている、自分をメシア的人物と自称したカリスマ的指導者。
- ヨセフス『ユダヤ古代誌』20.97–99 に見られるテウダスとは年代に相違し、同名の別人、あるいは資料上の錯綜の可能性がある。
「さて、フェストゥスがユダヤの総督であった間に、ある詐欺師が現れ、自分は預言者であると称し、民衆に対して、「私に従ってヨルダン川へ行けば、神の言葉によって川が分かれ、容易に渡ることができるようになる」と約束した。多くの人々が彼の言葉に惑わされ、彼に従った。
2. エジプト人(ὁ Αἰγύπτιος)
- 使徒言行録 21:38「それならお前は、最近反乱を起こし、四千人の暗殺者を引き連れて荒れ野へ行った、あのエジプト人ではないのか」
- エルサレムで蜂起し、群衆を荒野へと導いた、テウダス同様のモーセ型偽メシア運動首謀者。
- 『ユダヤ古代誌』20.97–99
3. テウダス(Θευδᾶς)
- ヨセフス『ユダヤ古代誌』20.97-99
20.97 フェストゥスがユダヤの総督であった時代に、一人の詐欺師が現れ、自分は預言者であると名乗り、人々に向かってこう語った。「私に従ってヨルダン川へ行けば、神の言葉によって川は分かれ、あなたがたは容易に渡ることができるようになる」と。多くの人々が彼の言葉に惑わされ、彼に従った。20.98 しかしフェストゥスは、このような行動が反乱に発展するのを防ぐため、騎兵部隊を派遣した。その結果、多くの者が殺され、また多くが捕らえられた。その詐欺師自身も捕らえられ、首を斬られ、その首はエルサレムへ運ばれた。20.99 このように、人々を惑わし、神の力を自分自身の業であるかのように装う者たちは、民衆の無知と愚かさにつけ込み、彼らをしばしば破滅へと導いたのである。
- モーセ再来・再現型の偽メシア。捕縛後に処刑され、その首はエルサレムへ運ばれた。
4. 無名の偽メシア扇動者的な預言者たち
- 『ユダヤ戦記』2.259–263
2.259 さて、この時代には、民衆を扇動して騒乱へと導く者たちが数多く現れた。彼らは、神の霊感を受けているかのように装い、荒野へ出るよう人々に勧め、そこで神が彼らに救済のしるしを示してくださると約束した。2.260 しかしこれらの者たちは、真理を語る者ではなく、民衆の心を惑わし、彼らを破滅へと導く詐欺師であった。多くの人々が彼らに従い、正気を失ったかのように振る舞った。2.261 総督フェリクスは、これらの集団行動が反乱へと発展することを恐れ、騎兵部隊と歩兵部隊を派遣した。その結果、多くの者が殺され、また多くが捕らえられた。2.262 中でも、エジプト人と呼ばれる者は、 自分は預言者であると称し、三万人もの人々を引き連れて荒野からオリーブ山へと登った。2.263 彼は、そこからエルサレムへ侵入し、ローマ軍を打ち倒し、自らが民衆の支配者となることを目論んでいた。しかしフェリクスはこれを未然に察知し、軍をもって迎え撃ち、多くを殺し、また捕らえた。その首謀者は逃亡したが、二度と姿を現すことはなかった。
- 『ユダヤ古代誌』20.167–168
20.167 フェリクスの統治下においても、詐欺師や偽預言者たちが次々と現れ、民衆を扇動して荒野へと導いた。彼らは、神がそこで自由のしるしを示してくださると告げ、人々に彼らを救済者であるかのように信じ込ませた。20.168 しかしフェリクスは、これらの動きが反乱に結びつくことを恐れ、軍を派遣して彼らを討ち、多くの者を殺し、また捕らえた。このようにして、民衆を惑わす者たちは、自らの虚偽によって滅びを招いたのである。
5. メナヘム(メシア的王の僭称者)
- 『ユダヤ戦記』2.433–448
2.433–434そのころ、ガリラヤのユダの子であるメナヘムという者がいた。彼は仲間を率いてマサダ要塞を奇襲し、そこに保管されていた武器を奪取した。そしてその武器を配下の者たちに分け与え、彼らの指導者となった。2.435–437メナヘムは武装した一団を引き連れてエルサレムに入城した。彼は次第に王であるかのように振る舞い、尊大な態度を取り始め、人々に対しても、他の反乱指導者たちに対しても、専制的に命令するようになった。2.438–440その傲慢な振る舞いのために、彼は多くの反感を買った。とりわけ、神殿を掌握していたエレアザル一派との間に深刻な対立が生じ、反乱勢力の内部で主導権を巡る争いが激化した。2.441–445やがて神殿での混乱の中で、メナヘムは捕らえられた。彼は人々の前で引きずり回され、王のように装っていた衣装を剥ぎ取られ、激しい辱めを受けた。2.446–448その後、メナヘムは拷問を加えられた末に殺害された。こうして、王を僭称した者の支配は、完全に終わりを告げた。彼の仲間たちも散り散りになり、その勢力は瓦解した。
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