2025年5月24日土曜日

使徒教父 ー使徒の教えを継承する者、クレメンス、イグナティオス、ポリュカルポス、パピアスなど

 

ーーーレジュメーーー

【キリスト教史】使徒教父 Apostolic Fathers, ca. 90-ca. 140 CE

 

1 概要

・年代は90年頃から140年。

・狭義 使徒たちの指導を受けた教父。

 広義 使徒から指導は受けていないが、意志を継承した教父。

・使徒教父によって執筆された一連の文書=「使徒教父文書」


2 定義、年代など

・伝統的には、使徒たちの教えを受けた教父たちだが……

・今日では、使徒たちと直接的な関係はないが、彼らの意志を継承した教父を表す。

・時代としては、1世紀後半から2世紀中葉の教父の活動期

・「使徒教父」という呼称:

 フランス人コトリエ J. B. Cotelier の17世紀の著書の表題に由来。

・使徒教父によって執筆されたとされる文書=「使徒教父文書」

 成立年代:第一クレメンスの90年代

       ?ヘルマスの牧者の150年代


・新約聖書文書の後期の書、推定成立年代順では、

 使徒言行録、第一ペトロ、ヨハネ福音書、ヨハネの手紙、

 ヨハネの黙示録、ヤコブの手紙、第一テモテ、第二テモテ、

 テトスへの手紙、第二ペトロ(150年頃)などの成立期と重なる

 →上記の文書の成立事情を分析する上で、使徒教父文書は重要


 3 代表的な使徒教父

・ローマのクレメンス

・アンティオキアのイグナティオス

・スミルナのポリュカルポス

・ヒエラポリスのパピアス

・『ヘルマスの牧者』の著者

・『バルナバの手紙』の著者

・『十二使徒の教訓』の著者


 4 使徒教父文書 

『バルナバの手紙』1世紀前半

『クレメンスの第1の手紙』96年頃

『クレメンスの第2の手紙』2世紀中葉

『ヘルマスの牧者』2世紀前半

『イグナティオスの手紙』2世紀初頭

『ポリュカルポスの手紙』イグナティオスの死の直後。110年前後

『ポリュカルポスの殉教』(19世紀以降に加えられた書)

『パピアスの断片』100-130年頃

『コドゥラトゥスの断片』117-124年頃

『ディオグネートスへの手紙』2世紀後半

『十二使徒の教訓』(『ディダケー』19世紀末に発見。1世紀末から2世紀初頭。ただし、教会的慣習に触れるパートについてはさらに昔に遡る可能性)


5 使徒教父文書について備考的事項

・『ディダケー』『バルナバの手紙』『第一クレメンス』『第二クレメンス』など = 新約聖書文書と同等の権威を持っていたが、

 ・『ディダケー』以外は執筆者が使徒性を主張していない

 ・内容的に正典文書の補足的なものである

 結果:新約聖書正典には組み入れられなかった。


・本来は護教文学に属する 『ディオグネートスへの手紙』

 11:1で「使徒たちの弟子」と自称している

 →使徒教父文書に組み入れられた。


6 思想、時代背景

・使徒教父たちの時代背景と直面していた課題

 =ローマ帝国による迫害

  異端との闘いである。


7 特徴ー殉教への崇敬

・ 『第一クレメンス』、『イグナティオスの手紙』、

  『ポリュカルポスの殉教』、『ヘルマスの牧者』

  =帝国による迫害、背教者の出現について言及。

・殉教の死がキリスト者の最高の栄誉であると主張。

・ただし、ローマ皇帝や帝国への批判や否定等は見られない。


8 特徴ー異端に対して

・イグナティオス、ポリュカルポス

 主な論敵はドケティズム信奉者

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