【キリスト教史】使徒教父 Apostolic Fathers, ca. 90-ca. 140 CE
1 概要
・年代は90年頃から140年。
・狭義 使徒たちの指導を受けた教父。
広義 使徒から指導は受けていないが、意志を継承した教父。
・使徒教父によって執筆された一連の文書=「使徒教父文書」
2 定義、年代など
・伝統的には、使徒たちの教えを受けた教父たちだが……
・今日では、使徒たちと直接的な関係はないが、彼らの意志を継承した教父を表す。
・時代としては、1世紀後半から2世紀中葉の教父の活動期
・「使徒教父」という呼称:
フランス人コトリエ J. B. Cotelier の17世紀の著書の表題に由来。
・使徒教父によって執筆されたとされる文書=「使徒教父文書」
成立年代:第一クレメンスの90年代
?ヘルマスの牧者の150年代
・新約聖書文書の後期の書、推定成立年代順では、
使徒言行録、第一ペトロ、ヨハネ福音書、ヨハネの手紙、
ヨハネの黙示録、ヤコブの手紙、第一テモテ、第二テモテ、
テトスへの手紙、第二ペトロ(150年頃)などの成立期と重なる
→上記の文書の成立事情を分析する上で、使徒教父文書は重要
3 代表的な使徒教父
・ローマのクレメンス
・アンティオキアのイグナティオス
・スミルナのポリュカルポス
・ヒエラポリスのパピアス
・『ヘルマスの牧者』の著者
・『バルナバの手紙』の著者
・『十二使徒の教訓』の著者
4 使徒教父文書
『バルナバの手紙』1世紀前半
『クレメンスの第1の手紙』96年頃
『クレメンスの第2の手紙』2世紀中葉
『ヘルマスの牧者』2世紀前半
『イグナティオスの手紙』2世紀初頭
『ポリュカルポスの手紙』イグナティオスの死の直後。110年前後
『ポリュカルポスの殉教』(19世紀以降に加えられた書)
『パピアスの断片』100-130年頃
『コドゥラトゥスの断片』117-124年頃
『ディオグネートスへの手紙』2世紀後半
『十二使徒の教訓』(『ディダケー』19世紀末に発見。1世紀末から2世紀初頭。ただし、教会的慣習に触れるパートについてはさらに昔に遡る可能性)
5 使徒教父文書について備考的事項
・『ディダケー』『バルナバの手紙』『第一クレメンス』『第二クレメンス』など = 新約聖書文書と同等の権威を持っていたが、
・『ディダケー』以外は執筆者が使徒性を主張していない
・内容的に正典文書の補足的なものである
結果:新約聖書正典には組み入れられなかった。
・本来は護教文学に属する 『ディオグネートスへの手紙』
11:1で「使徒たちの弟子」と自称している
→使徒教父文書に組み入れられた。
6 思想、時代背景
・使徒教父たちの時代背景と直面していた課題
=ローマ帝国による迫害
異端との闘いである。
7 特徴ー殉教への崇敬
・ 『第一クレメンス』、『イグナティオスの手紙』、
『ポリュカルポスの殉教』、『ヘルマスの牧者』
=帝国による迫害、背教者の出現について言及。
・殉教の死がキリスト者の最高の栄誉であると主張。
・ただし、ローマ皇帝や帝国への批判や否定等は見られない。
8 特徴ー異端に対して
・イグナティオス、ポリュカルポス
主な論敵はドケティズム信奉者
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