2025年1月30日木曜日

【諸宗教】マンダ教 ー今も現存する古代のグノーシス的混合宗教

 


 レジュメ

 1 概要

成立:2-3世紀

成立場所:メソポタミア南西部からパレスチナ

性質:グノーシス主義の影響を受けて発生した混合宗教

「マンダ」という語はアラム語の方言のマンダー(霊知)に由来。聖典は『ギンザ』(宝物の意)。流水で浸礼を行うことを重視



 2 名称の由来、成立年代、成立地域

・2世紀から3世紀にかけて、メソポタミア南西部、パレスチナで

 土着宗教を取り込んで誕生したと推測

・グノーシス主義(2-3世紀を最盛期とする宗教的思想のブーム)

 の影響を受けて発生した混合宗教

・現状:チグリス・ユーフラテス下流域、イラク南部、南西部を

    活動地域として現存

    推定信徒数2000人(1991年の上岡弘二氏調べ)

     世界各地に数万人存在か


 3 宗教的営為

・流水で洗礼(形式は浸礼、全身浴)を行う習慣が重視

 天上より山岳に流れ降る水を想起し、北を向いて礼拝

・浄めとして行われ、信徒の居住区域は流水のある場所に限定

 キリスト教の洗礼のように、1回限りの入会儀式ではない


 4 聖典

・『ギンザ』(宝物を意味、推定成立年代1世紀)。

  原書は変形アラム文字で執筆。

  内容は二元論的宇宙論と儀式について。


 5 教義の特徴

・中東の自然信仰をベースとして、グノーシス主義を取り込んでいる

・グノーシス的ユダヤ教、グノーシス的キリスト教、マニ教と繋がり

・光と闇、善と悪、精神と物質の二元論が特徴

 起源であるコスモスへの復帰を目指す救済論

・キリスト教のイエスを偽預言者と見なす一方、

 バプテスマのヨハネを崇敬

・中世近東旅行記の「聖ヨハネのキリスト者」はマンダ教徒?


ーーーー 動画の完全原稿 ーーーー

 今回は宗教学上のカテゴリー、「諸宗教」の主題として、古代時代から続きなおも現存するマンダ教について解説したいと思います。

 まずは概要からとなります。成立は2世紀から3世紀。成立場所としては、メソポタミア南西部からパレスチナ周辺と推定されていまして、非常に広域ですけれど、自然発生的に成立したものですから、要は成立場所をピンポイントで特定しかねるということです。

 教団の性質としては、グノーシス主義の影響を受けつつ、その地の土着の信仰とも融合して発生した、混合宗教となります。名称の由来となってるマンダーと言う語は、アラム語の方言のマンダー、これは霊的な知恵と書いて霊知を指すものですけれども、これに依頼するものとなっています。

 正典は、宝物を意味する語に由来するギンザ。

 しばしば指摘されるマンダ教の宗教的営為の特徴として、全身を水につけての洗礼、これを浸礼と呼びますけれども、流水でもって洗礼を受ける習慣が挙げられます。


2

 次に、次に名称由来、成立年代、成立地域についてもう少し詳しく見ていきましょう。ただいま述べた通り、マンダ教は2世紀から3世紀かけて、メソポタミア南西部からパレスチナで、土着信仰を取り込んで誕生したと推測されると。

 グノーシス主義というのは、2世から3世紀を最盛期とする、宗教的思想、救済論をベースにした宗教的思想のブームというものでして、グノーシス教なるものが単独で存在するわけではありません。ユダヤ教やキリスト教、そして今回のようにメソポタミアの土着信仰に感染し、元々の遺伝子を書き換え、グノーシス化するという、言ってみればウイルスが生命の細胞を奪って自己生成を繰り返すような、ウイルス的な宗教思想の流行です。

 現状としては、チグリスユーフラテスの下流域、イラク南部、南西部を活動地域として、今日でも現存する宗教です。推定信徒数は、研究者の上岡弘二さんの調べでは、2000人程度、また、世界各地のコミュニティを合わせれば数万人程度存在かということで、かなり小規模で、存続が危ぶまれる状況に至っていると言うことができます。


3

 次は、宗教的営為について触れたいと思います。

先ほど述べた通り、流水で洗礼を行う習慣が重視されています。天上より山岳に流れ下る水を想起しつつ、北を向いて礼拝を捧げると。

 これは清めとして行われるもので、継続的に何回も受けるものとなっています。誤解のないよう注意しなければいけないのは、キリスト教の洗礼のように、一回限りの入会儀式ではないと言うことですね。


4

4番、聖典について。宝を意味するギンザで、推定成立年代は1世紀頃。原書は、変形アラム文字で執筆されています。ないようについては、二元論的宇宙論、並びに、儀式に関するものとなっています。


5

 教義の特徴としては、中東の自然信仰、土着信仰をベースにしていて、それが多分にグノーシス主義化されているという形です。

グノーシス的に変容を遂げた、グノーシス的ユダヤ教、グノーシス的キリスト教、マニ教と繋がりがあります。

二元論的世界観、例えば、光と闇、善と悪、精神と物質などが特徴的です。そして、起源であるコスモスへの回帰というものが、救済論の根幹を成しています。

また、キリスト教のイエスに対しては低評価で、偽預言者と見なす一方で、キリスト教ではイエスの補佐的な位置付けにされていた洗礼者ヨハネが崇敬されているという点が、大変に興味深いというものです。

 中世近東旅行記にしばしば登場する「聖ヨハネのキリスト者」は、マンダ教ではないかという指摘もされています。


 以上です。試聴していただきまして、ありがとうございました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。