レジュメ
1 定義
・キリスト教の正統な教義に反する異端的な信仰的言動を摘発、
処罰するために設置された機関や制度
・歴史全体を、古代教会時代、中世中期、中世後期から近代、と分けると良し
2 歴史的経緯
2-1 古代教会時代
・→異端かどうかの検討・議論 大規模になると公会議を開催
→異端認定
→破門、追放
例 キリストの神性を巡る「アレイオス論争」と「ニカイア公会議」(325年)
2-2 中世時代
概要
・中世時代中期、カタリ派、ワルド派などの異端的一派の興隆
対策として設置された異端審問制度
・中世末期から近代、魔女狩り(魔女裁判)による苛烈化
→異端審問は悪名高いものとして認知されるように
詳しい経緯
・12世紀後半、カタリ派、ワルド派などの異端的一派が興隆
(極端な禁欲生活と二元論的世界観、反カトリックなどの特徴)
→1215年、第4ラテラノ公会議にて、異端に際する裁判制度を設立
・1231年、教皇グレゴリウス9世の時代、異端審問制が制度化
・教皇庁直属の体制下に置かれる。審問官は教皇による任命
ドミニコ会修道士、フランシスコ会修道士から多く選ばれた
問題点
・教皇直属で、地域教会の教権と審問官の権限のバッティング
・審問官や聖職者の申告の他、一般人からの密告が奨励
虚偽の報告が横行し、それに対する報酬制度 →商売化
・審問官が刑事役、検事役、判事役を兼ねるという偏った集中
→従来の教会裁判法から逸脱した権限が行使
<被疑者に対する出頭から刑罰執行まで>
・被疑者への出頭義務、強制出頭
・被疑者への宣誓の義務
・被疑者への拷問行為の許可、自白の強要
・判決:悔い改めの十字架着用、聖地巡礼、投獄、処刑、没収
権力行使を委ねられた俗権の暴走
ーーーー 完全原稿 ーーーー
今回は、キリスト教関連のテーマとして、異端審問を取り上げます。なお、これが苛烈化した魔女狩りの時代に行われた、拷問や処刑の詳しい方法といったことを前面に取り上げる主旨とは違いまして、その歴史的経緯を客観的に見るというものとなっています。
さて、異端審問とは、他の諸宗教でも見られるものですが、キリスト教におけるものに絞っています。
キリスト教会における異端審問とは、正統な教義に反する異端的な信仰的言動を摘発、処罰するために設置された機関や制度を意味します。
異端審問の歴史全体は、古代教会時代、中世中期、中世後期から近代、という3つに分けるとスマートかなと思います。
そこでまずは、古代教会時代からとなります。
キリスト教会というのは、最初期の時代から異端的な思想の揺さぶり、例えばグノーシス主義などとの格闘を余儀なくされたため、ある教義が正統か異端かを見極める性格が非常に強い宗教となっています。実際、古代教会時代から異端審問的な制度はあり、その実践においては、異端認定、断罪、破門、という流れが通例でした。例えば大規模のものでは、キリストの神性を巡っての論争、通称・アレイオス論争が巻き起こりまして、最終的にはニカイア公会議を招集して決着させたという出来事があります。
次に、中世時代です。まずは概要を述べると、中世時代の中期、カタリ派やワルド派といった一派の興隆と、カトリックの教皇側による異端審問制度を設置の時代。そして、中世末期から近代の魔女狩りの時代における、異端審問制度の暴走時代。と分けるとわかりやすいと。
そこで詳しい経緯になります。12世紀後半になると、極端な禁欲生活と二元論的世界観、そして反カトリックといった特徴を持つ、カタリ派、ワルド派といった異端が生じます。形としては修道会のような生活スタイルですが、教義が偏って逸脱し、カトリック体制を否定するところまでいったのが、命取りであったかと推測します。
ともかくも対応を迫られたカトリックは、1215年に第4ラテラノ公会議において、異端に際する裁判制度を設ける方針を定めました。そうして1231年、教皇グレゴリウス9世の時代、異端審問世が制度化され、本格稼働を始めます。
こちら、教皇庁直属の体制化に置かれたものですから、そうすると、各地域に司教がいて、その教権とバッティングするわけです。例えれば、警視庁の本庁から偉い人が来て、現場の指揮権に口出しするといった、刑事ドラマみたいなものでしょうか。
当初、審問官にはドミニコ会、フランシスコ会といった修道会から多く任命されました。
異端審問制度の問題点を挙げますと、先の教皇直属がまず一つ。次は、聖職者からの申し出や審問官の調査の他、一般人からの密告も奨励されまして、それが全然関係のない、虚偽の報告が横行する事態を招来し、これにまた報酬が支払われたものですから、今日の転売ヤーとは全く質が異なりますけれども、これで飯食っていく人が出るわ、個人的恨みつらみで密告するわ、地獄の様相を呈していくわけです。
それでも、複数のチェック体制があればいいのですが、審問官が刑事役から判事役まで兼ねるという一極集中で、しかも審問官が民間に調査を一任するなどして、これもカオスな状態へと陥っていったわけです。
ここで、被疑者に対する出頭から刑罰執行までの流れを説明しましょう。まず、被疑者への出頭義務、強制出頭、逮捕ですね。これもろくなチェック体制なく、審問官の判断で全てオッケーと。次は、被疑者への宣誓の義務。これはまだいいとして、次が問題です。拷問行為、自白の強要が正当化され、この辺りの目を覆うばかりの蛮行が、世に取り沙汰されているというわけです。拷問法や拷問器具などについては、動画がたくさん挙げられていますね。
判決が出ますと、軽い場合には悔い改めの行為に留まりますが、大概は投獄、でもまだマシかもしれない。魔女認定されると火炙りなどの処刑になると。それで、遺品など財産は没収されて、そこから民間に成功報酬が出るなどとなると、金儲けの一種の産業構造が出来上がるまでにいたりまして、これもまた、地獄を超える地獄の様相、というわけです。
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