2024年1月25日木曜日

宗教学とは何か

宗教学とは何か


 【要約】

宗教団体、宗教的文化、宗教的現象を研究対象とする学問的営為。信仰させることは目的ではない。特定の宗教教義や信仰を前提として、教化、護教の目的として為される教学、宗学とは異なる。全ての宗教を客観的かつフラットに見る。


 【本文】

 宗教学とは、宗教団体、宗教的文化、宗教的現象を研究対象とする、学問的営為である。よって、特定の宗教における信仰をもたらしたり、深めたりするものではない。


 宗教学の立場

 宗教学とはまた、キリスト教やイスラム教における神学、神道や仏教における教学、宗学とは異なる。これらは、特定の宗教教義や信仰を前提として、教化、護教の目的として為される思想的営為であるから、すべての宗教を客観的かつフラットに見る宗教学とは異なるものである。


 宗教学の基本的な姿勢の一つは、たとえ自分が信じている宗教といえども、あくまで客観的に事実を扱い、主観的な価値判断を避けることである。加えて、複数の諸宗教を比較する際、優劣の判断はしない。現象の一つとして扱う。


 二つ目は、宗教を神や超自然的な世界から扱うのではなく、人間の営みの一つとして、生活現象の一局面として捉えることである。宗教学から見た宗教とは、神や真理の問題ではなく、結局、人間自身の問題である。神や真理といったものは、人間の思考や心理から発生しているものとして位置づけ、そのメカニズムを分析することが求められる。


 三つ目は、特定の一宗教のみ扱うのではなく、複数の宗教を資料として扱うことである。一宗教だけ観察していては、他と比較ができないからである。


 宗教学と宗教史の違い

 宗教学は、宗教形態や信仰内容を、他宗教と比較しつつ、体系的に整理するという研究方法を採る。他方、宗教史は、宗教の発生、変遷を、適宜他宗教との歴史的な繋がりを意識しながら、歴史的な視座で観察する。


 宗教学に関連する学問

 宗教学に関連するか、もしくは、宗教学の中の専門分野の一つとし数えられる学問として、以下を挙げ得る。比較宗教学、宗教心理学、宗教社会学、宗教哲学。


 宗教学が成立するに際して、1800年代後半、例えばフリードリヒ・マックス・ミュラーによる東洋古典、インド学研究、比較言語学、あるいは神話学の研究が進展し、その追い風を受けて、比較宗教学の分野が確立されていった。Science of religion(宗教学)という名称は、このマックス・ミュラーにより使用され始めたものである。


 それ以降、C. P. ティーレ、N. ゼーデルブロムらによって、歴史学や考古学の成果が宗教学に取り込まれるようになっていく。同時に、M. ヴェーバーやデュルケムにより社会学的な視点が宗教学に盛り込まれ、宗教社会学が成立していく。心理学も急速に発展を遂げていったために、心理学的な分析を採用した宗教心理学がE. D. スターバック等によって開拓されていった。


 さらに、未開民族の研究が進んでいくと、民俗学、人類学が発達し、これらを吸収した宗教人類学等ももたらされていった。


 【関連項目】

宗教学

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