2023年9月14日木曜日

「コラール」と「コラール前奏曲」について

 1 「コラール」とはーー初期キリスト教時代からの歴史をザッと読み

 「コラール」とは、一言で言えば、教会の礼拝において会衆によって唱和される讃美歌のことです。そもそもキリスト教において讃美歌は、初期キリスト教時代ではキリスト教徒によって普段から口ずさまれていたものでした。ところが、キリスト教のローマ帝国における公認以降、礼拝は公的な儀式としての格式ある位置を獲得していった一方、民衆的な形は損なわれていきます。そうして古代時代から中世時代以降に掛けては、賛美は聖歌隊のような専門職の者たちだけが行うようになり、一般会衆はそれを聞いているだけのスタイルとなったのでした。しかも、その歌詞はラテン語といういわば国際公用語であり、母国語しか知らない人間にとっては理解できないものでした。そもそも礼拝で使用される言語も、西ヨーロッパ全体に拡散したローマ・カトリック教会の全てにおいて、ラテン語で統一されていました。

 それが近代に差し掛かると、ヨーロッパの各地でナショナリズム(自民族や自国の自治独立と独自性を主張する運動)が、急速に高まっていきます。聖書を英語に翻訳しようという流れも生じていきます。そんな時代に現れたのが、宗教改革者マルティン・ルターでした。彼は聖書のドイツ語訳を成し遂げたばかりか、母国語、すなわちドイツ語による讃美歌の作成、礼拝への導入に貢献しました。そうしてドイツのルター派教会で歌われるようになった讃美歌こそ、「コラール」に他なりません。

 音楽上の様式の変化についても、ザッと見ていきましょう。古代から中世においては、例えばグレゴリオ聖歌のような単旋律が主流でしたが、ルネサンス以降、ア・カペラ(原意は「礼拝堂で」。器楽伴奏のない歌唱)でのポリフォニー(複旋律)が広まりました。「コラール」の時代になると、四声部構成の曲が主流となりました。


 2 「コラール前奏曲」とは

 「コラール前奏曲」とは、文字通り、コラールの前奏曲です。会衆によってコラールが唱和される“前”、演奏されるオルガン曲を意味します。大抵のコラール前奏曲では、元になっているコラールのメロディが主題とされています。それが変奏されたり、拡大されたり、時には異なるメロディも加わったりなど、変幻自在な変化を伴って全体が構成されています。


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