2025年6月16日月曜日

授業「キリスト教学 B3」講義レジュメ 第1回 オリエンテーション、キリスト教前史

キリスト教学B 3

担当:大石健一


オリエンテーション

 成績評価

平常リポート 60 %

その他 40 % 授業後にルナにて提出するコメントや質問を評価対象とする。

授業中の私語は、指摘した時点で100点満点中の5点を失う。

(体調とは関係ない)居眠り、退席、スマートフォンでのゲームは、1点を失う。


 授業計画

第1回 オリエンテーション、キリスト教前史

第2回 キリスト教の歩み(1):古代、中世

第3回 キリスト教の歩み(2):宗教改革期

第4回 キリスト教の歩み(3):近現代

第5回 キリスト教の死生観

第6回 キリスト教における愛

第7回 キリスト教歴史トピック:イスカリオテのユダの真実

第8回 キリスト教歴史トピック:十字軍

第9回 キリスト教歴史トピック:魔女狩り

第10回 日本人とキリスト教

第11回 文学とキリスト教

第12回 クリスマスの起源と展開

第13回 クリスマスと絵画

第14回 クリスマスと映画

キリスト教前史

 序

・キリスト教は、ユダヤ教(=ユダヤ民族、民族宗教)から派生した。

 イエスはキリスト教を創立しようとしたのではない。

 ユダヤ人(=ユダヤ教)の神信仰の刷新(改革運動)を試みた。

・イエスの十字架死(と復活)後、弟子たちはイエスをメシアとする運動を展開。

 →ユダヤ人側、ユダヤ教内の異端的一派を取り締まる(迫害)

 →やがて排斥運動から追放処分へ。最終的に、完全分離。キリスト教の成立。


・キリスト教における聖書 旧約聖書と新約聖書の2部構成

  旧約聖書  キリスト以前  =ユダヤ教の正典

  新約聖書  キリスト以降  =キリスト教会が作成した文書群

  (ちなみに、イエスは書を残していない。弟子たち、信徒たちがした)

 だから、ユダヤ教徒にその正典を「それ、旧約聖書だね」と言ったら失礼。

・キリスト教は、旧約時代の歴史を「前史」と理解する。

 →自らを旧約時代の正統後継者と自己理解する

 他方、ユダヤ教も旧約時代の正統歴史と自己理解する

・結論:キリスト教「前史」とは、旧約時代を一般的に指す。

 但し、キリスト出現直前の時代を指す場合もある。


1.キリスト教前史

1.1.・天地創造(『創世記』)からアブラハム以前まで

 アダムとエバ  禁断の果実、堕罪、カインとアベルの兄弟殺人

 ノアの方舟  大洪水

 バベルの塔  人類の野望と挫折。言語、コミュの混乱。


1.2.族長時代

 アブラハム  ユダヤ民族の父祖、始祖。偉大な人。時々、人間臭い。

        神との約束、契約 →(旧い)契約→旧約

 イサク  アブラハムの子。真面目で優秀。

 ヤコブ  イサクの子。ずる賢い。

 ヨセフ  予知能力、優秀。でも天然。悪気はないけど……

  十二人の子供→十二部族  神から「イスラエル」(神と争う)と命名される。

 *ユダヤ民族は十二の部族で構成されていた。以上はその先史の物語。


1.3.モーセ

 エジプトで酷使されていたイスラエル民族(=後のユダヤ人)

 彼らを引き連れ、脱出。約束の地カナンへ導く。

 カナン:地中海とヨルダン川に挟まれたエリア。パレスチナに相当。

 約束の地の目前で死去。後継者はヨシュア。


1.4.ダビデ王朝から南北王国時代(在位;前1000-960年頃)

 初代王はサウル、ダビデは2代目。

 子であり後継者であったソロモン王時代、国家は南北に分裂。

 →「北イスラエル王国」 後述のユダ族とベニヤミン族以外の10部族

  アッシリアにより、ホシェアを最後に前722年頃に滅亡。

  アッシリアの植民政策、異民族同士の婚姻政策により、民族的純血を喪失。

  以後、後述の南ユダ王国の末裔であるユダヤ人から、サマリア人として蔑視される

 →「南ユダ王国」 名称はヤコブの子ユダ、またユダ部族に由来。

  前587年、ゼデキヤ王時代に、バビロニア帝国により滅亡。

   首都エルサレムの破壊と放逐。連行=「バビロン捕囚」

  前539年、バビロニアがアケメネス朝ペルシャによって滅ぼされて解放。

  その後、プトレマイオス朝エジプト、セレウコス朝シリアによる植民統治時代へ


1.5.ハスモン朝時代(前141-63年)

 前166年 ユダ・マカベア、セレウコス朝シリアに対して決起。「マカベア戦争」 

 マカベアの兄弟シモンの子ヒュルカノスが大祭司職を継承した前134年、マカベア王朝(ハスモン王朝)成立。

 

1.6.イエス時代のユダヤ

 前37年、ヘロデ大王支配のもと、実質的にローマの属国(植民地)とされる。

・ローマの属国支配に対する不満。

 サドカイ派等、貴族層:現状維持を望む。利権確保。保守層。

 ファリサイ派:宗教指導者層は、異教民族による支配を望まず。

・過激派・極左翼:「熱心党(ゼーロータイ)」保守層の政治家を暗殺。武装蜂起。

・政情不安。経済的貧困 → 閉塞状況、鬱積する不満

・「メシア待望」の高まり

 神がかり的を力を授かった指導者が現れ、自民族を解放することへの過剰な期待。

・貧富の差の拡大。不条理。社会の歪み。


 1.7.イエス運動

・「神の国は近づいた」「貧しい者たちは幸いである」

 社会的弱者、一般民衆に対する、神の恵み。神の国到来の告知。

・病気の癒し、悪霊払いの奇跡。

・十字架刑死による、イエス運動の途絶。

・復活? 「イエスは復活した」との弟子たちによる宣教

・ペンテコステ(聖霊降臨)? 初期教会の成立。

・新約文書、随時、形成。教義の確定。今日のカトリック教会の原形ができあがる。


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