オリエンテーション キリスト教の歴史、キリスト教倫理
1 倫理とは
・人がいかにして生きるか。何をするべきで、何をすべきではないのか
←単純な問題ではない。例えば、人を殺してもいいか問題
駄目に決まっている?……普通、仲間、同国民については駄目
一方、戦争上の敵についてはOK、が多い
→どっちなの? どう考えたらいいの? =倫理的な問題
→他方、キリスト教のイエスは、「敵をも愛せ」と言っているけど、どう考えれば
=キリスト教上の倫理的な問題となる
・例 人工中絶問題
恣意的に、母体の胎児を殺していいのか。母胎内の胎児は、どこから人の生命となる?
法律上は、最後にあった生理から22週未満まで。母体へのリスクも考慮して。
→でも、法律上OKでも、これっていいの?と考えると、いわゆる倫理的考察に
→キリスト教ではどう?と考えると、キリスト教上の倫理的問題
→ただ、一口にキリスト教と言っても、膨大な数の教派・教団がある
人工中絶自体、キリスト教でも教派、教団によって相違
カトリック:(表向きは)いかなる理由があろうとNo
他の一部の教派・教団:特殊な事情による妊娠など特例を認めることは多い
・通常の倫理であれ、キリスト教倫理であれ、
=答えは簡単に一つには決まらない。皆それぞれ意見が違ってくる。
なぜなら、論理と証明が明確な数学などとは、根本的に違うから。
なぜ違う? ……人それぞれ、国、民族、常識、考え方が違う。年齢も性別も違う
個々人でも、性格、状況、考え方も異なる。
よって、皆が違う中で、あるべきと思える答えを導き出すことを迫られている
(現実に迫られていなければ、こんな面倒くさいことは考えなくていいが)
=これこそ倫理という問題の実体 「いかに生きていくかという課題を目の前にして」
2 倫理的判断の遂行
・人間が生きていく上で、何が善で、何が悪か。何を善とし、何を悪とするか。
・しかし、時代、文化、国、個人によって変化する相対的なもの。普遍的ではない。
・やりようがない?……それでも、誰でも合意するラインはあるし、筋道は模索できる。
例えば、「殺人はだめだよね?」「じゃあ、戦場での兵士はしていいの?」「うーん。許されるけど、戦争そのものが良いのか悪いのかという問題だよね」「じゃあ、正当防衛は?」「それはいいと思うけど」「ということは、仲間同士、家族同士の殺人は、明確にだめとなるね」「そうだね。ただ、家族内の虐待とか、正当防衛とかの問題もあるけど」「虐待された故の殺人とか、情状酌量も適用されたりするしね」「じゃあ、死刑って、正当化される?殺人にならない?」「え?死刑は別じゃ……いや、待てよ。死刑とはいえ、人が人を殺す権限は許されるのかという問題があるね。今は、廃止にした国の方が多いみたいだし」「だね。日本も少数派だよ。まあ、死刑の是非の問題は別として、少なくとも正当な理由なき殺人はダメだよね」「だね」
・こういう、対話の繰り返しで、筋道がなんとなく見えてくるのが肝。
3 キリスト教倫理における倫理的判断の遂行
・キリスト教的な世界観、神観、人間観、死生観、善悪観、その他もろもろ、
総じて、キリスト教的世界観の枠内で、考えて、判断していく。
4 キリスト教倫理とは
A 考えていくベースを、キリスト教神学的に構築、検討する学。
神に創造された人間と世界。人の生きる目的。人の罪の問題。命と死とは。
すごくキリスト教神学的になるから、神学部でやることが多い。
例、アウグスティヌスにおける倫理の研究、とか。近代神学における倫理とか。
B 人工中絶、安楽死、環境問題、差別問題など、具体的な課題と向き合う実践。
キリスト教主義学校で、死生観とか人間観とか関わるような学部でも扱い得る。
→ということで、この授業のキリスト教倫理は、実践関係が大勢を占める
5 講義スケジュール
第1回 オリエンテーション キリスト教の歴史、キリスト教倫理
第2回 キリスト教倫理、応用倫理
第3回 生命倫理(1)生命倫理とキリスト教、生殖医療
第4回 生命倫理(2)生殖医療、人工妊娠中絶
第5回 生命倫理(3)出生前診断
第6回 生命倫理(4)遺伝子検査・操作、終末期医療、安楽死・尊厳死
第7回 生命倫理(5)脳死・臓器移植、再生医療(ES細胞・iPS細胞)
第8回 社会倫理(1)社会倫理とキリスト教、人種差別・民族差別
第9回 社会倫理(2)身体的差異による差別 性差別
第10回 環境倫理(1)環境倫理の原点、環境倫理とキリスト教
第11回 環境倫理(2)地球環境問題
第12回 環境倫理(3)食卓の現実、持続可能な開発目標
第13回 環境倫理(4)高度情報化社会・AI研究、宗教間対
第14回まとめ・予備日
次回分を念のため
6 キリスト教の講義に関する側面のみに限定して、ざっくり
・ユダヤ人=イスラエルの民。民族宗教としてのユダヤ教。基本、国民全員ユダヤ教
・イエス、ユダヤ人として生まれ、ユダヤ教内で改革運動を始める。
=この段階では、まだユダヤ教
イエスの十字架死(と復活)後、弟子たちがグループを維持。=まだユダヤ教
いわば「ユダヤ教イエス派」、正統ユダヤ教から迫害される。=まだユダヤ教
規模が大きくなり、各地に点在するまでに成長すると、追放が進み、分離が進行
ユダヤ教から完全追放される =キリスト教が成立
・ということは……キリスト教はユダヤ教から分派した
・キリスト教時代にキリスト教会が作成した文書――新約聖書
ユダヤ教時代にユダヤ人が作成した文書 ――旧約聖書
・ユダヤ教は当然、旧約聖書のみを正典とする
キリスト教は、新約聖書のみ……とはならず、旧約聖書も保持
よって、キリスト教の聖書とは、旧約聖書+新約聖書
・よって、キリスト教では、旧約聖書における倫理を部分的に採用している
・代表例 = モーセの十戒
正教、聖公会、ルーテルを除くプロテスタント
(カトリックとルーテルが使用しているものと若干の相違あり)
主が唯一の神であること
偶像を作ってはならないこと(偶像崇拝の禁止)
神の名をみだりに唱えてはならないこと
安息日を守ること
父母を敬うこと
殺人をしてはいけないこと(汝、殺す勿れ)
姦淫をしてはいけないこと
盗んではいけないこと(汝、盗む勿れ)
隣人について偽証してはいけないこと
隣人の家や財産をむさぼってはいけないこと
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