2024年11月15日金曜日

「エフェソの信徒への手紙」緒論

 伝統的には、パウロが小アジア西岸に位置する都市エフェソの教会に書き送った手紙とされている。しかし、用語や文体がパウロ真正書簡と相当異なることや、パウロ思想との相違点が指摘されており(キリスト論が教会論に勝る神学から、教会論にキリスト論が統合される神学への変化。2:8における既に実現した救済。2:8「事実、あなたがたは、恵みにより、信仰によって救われました。このことは、自らの力によるのではなく、神の賜物です。」)、本書の真筆性に関して疑義が呈されている。そのため、本書の真筆性を否定する場合には、本書は第2パウロ書簡(「偽名書簡」とも言う)に含められることになる。


 エフェソの教会について

 エフェソの教会は、パウロの第2次伝道旅行(使徒言行録15:36-18:22)において、恐らく52年頃に設立された。後の第3次伝道旅行において、パウロはエフェソを再び訪れ、同地に2年間程滞在し、コリントの信徒への手紙、ガラテヤの信徒への手紙、フィリピの手紙を執筆した。


 『コロサイの信徒への手紙』との類似性

 内容や語彙において、本書と『コロサイの信徒への手紙』との類似性がしばしば指摘され、両書の文献的依存関係について議論されてきた。エフェソ書の方がコロサイ書に依存していると見なす説が優勢である。


 執筆時期

 本書のコロサイ書への依存を認める場合、90年頃に小アジアで執筆されたと見なすことが多い。


 内容

 全体構成としては、1-3章までの教理部分と4-6章の倫理的勧告部分に大別される。上述の通り、キリスト論をも包含するような、キリストを中心とした教会論が特徴的であり(2:11-22を参照)、キリストの十字架による和解によって異邦人とイスラエルの民が一つとされ(2:14以下)、キリストを要石として聖なる神殿とされ(2:21)、すべてがキリストにおいて一つとされるという論(1:10を参照)が展開されている。


 全体構成

1:1−2      挨拶

1:3−23     讃美と祈り

 1:3−14    神の恵みに対する讃美

 1:15−23   読者のための祈り

2:1−3:21   異邦人の救い・教会・福音

 2:1−10    読者の過去と現在・キリストによる救い

 2:11−12   異邦人とユダヤ人を一つにする教会

 3:1−13    異邦人のための福音に仕えるパウロ

 3:14−21   読者のための祈りと頌栄

4:1−6:20   倫理的勧告

 4:1−16    キリストの体なる教会

 4:17−5:20 異邦人読者のための勧告

 5:21−6:9  家庭訓

 6:10−20   悪魔との戦い

6:21−24    結び

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