2024年1月19日金曜日

士師記緒論

 概要

 ヘブライ語聖書での著名は、2:16等において「士師」と訳されているショーフェティームという語がそのまま用いられている。

 『士師記』は、イスラエル民族がモーセ、ヨシュアによって導かれて約束の地カナンに到達、定着した後の時代から、サウル、ダビデによる王国成立以前までの時代を取り扱っている。それは、ヨシュア記の続きを想起させる1:1の「ヨシュアの死後」という書き出しからも明瞭である。すなわち、複数の民族同盟に過ぎなかったイスラエルが、国家という形態を持つ王朝をたてる直前までの混乱の時期における一連の出来事が描かれている。尤も、王朝成立以後もイスラエルはしばしば混乱するのではあるが。

 「士師」および士師記の通奏低音については、以下の2:16-19に集約される。

「16主は士師たちを立てて、彼らを略奪者の手から救い出された。17しかし、彼らは士師たちにも耳を傾けず、他の神々を恋い慕って姦淫し、これにひれ伏した。彼らは、先祖が主の戒めに聞き従って歩んでいた道を早々に離れ、同じように歩もうとはしなかった。18主は彼らのために士師たちを立て、士師と共にいて、その士師の存命中敵の手から救ってくださったが、それは圧迫し迫害する者を前にしてうめく彼らを、主が哀れに思われたからである。19その士師が死ぬと、彼らはまた先祖よりいっそう堕落して、他の神々に従い、これに仕え、ひれ伏し、その悪い行いとかたくなな歩みを何一つ断たなかった。」

 士師とはつまり、罪に陥りその結果としての困窮に陥ったイスラエルを救うために、神によって立てられた指導者であり、彼らはまた3:9等で「救助者」とも呼ばれている。


 内容

1:1-2:6 序文:士師時代開始時の各部族の様子

2:6-16:31 本論

2:6-3:6 士師時代の要約(「主に背く世代」と「士師」) 3:7-16:31 士師たち

オトニエル、エフド、シャムガル、デボラとバラクギデオン、アビメレク、トラ、ヤイル、エフタ、イブツァン、エロン、アブドン、サムソン、

17:1-18:31 補遺:ダン族とベニヤミン族における二つの物語


 特徴

 士師記は、ヨシュア記の全体を編集した「申命記史家」により編集されたと言われる。恐らくは、元来は独立して流布していた士師たちの物語が、申命記史家によりまとめられ、ある一定の歴史観を持った書として編纂されたのだろう。すなわち、ヨシュア記は律法遵守によりもたらされた成功という結果を、そして士師記は、神に背く(律法に不従順)ことによりもたらされた罰と共に救済を示す。参照、申命記6:4-9および6:16-25における律法遵守の命令を見よ。

 士師時代の歴史観の特徴は、ヨシュア記(カナン定住)からサムエル記(王朝成立)までの直線的な歴史上に、「不従順→圧迫→悔い改め→救済」という一つのサイクルが延々と配置されていることにある。困難なしには神を忘れ、困難の時に神を呼び求めるという人間の罪の皮相が表出している。


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