2023年7月29日土曜日

敬虔主義

敬虔主義 Pietismus, late 17 c. - early 18 c.


【要約】

 17世紀後半から18世紀前半にかけて、ドイツのプロテスタント教会において生じた信仰復興運動。ドイツ三十年戦争による心理的荒廃が関与か。宗教改革以降の熱狂主義と主知主義による形骸化という双方の反省を踏まえて展開された。


本文

 17世紀後半から18世紀前半にかけて、ドイツのプロテスタント教会において生じた信仰復興運動。


 時代的背景として、ドイツ三十年戦争によってもたらされた荒廃した心理がある。マルティン・ルターによる宗教改革は、一方で再洗礼派のような熱狂主義を生み出し、他方、領邦教会の正統教会側は主知主義と形骸化へと陥っていった。そのため、信仰の再生・生きた信仰が求められたのである。


 敬虔主義の特徴として挙げられるのは、第一に、教義に関する知識のみに留まらない、宗教体験の重視である。信仰の体験が重んじられると、神学的な知識を持つ聖職者や神学者の立場に代えて、一信徒の主体性が高められる。また、聖書そのものから真理を得ようとするため、教義学よりも聖書学が重要とされていった。

 

 第二に、信仰の実践が指摘される。宗教的敬虔は禁欲的な生活を志向し、隣人愛は愛の実践としての社会福祉・社会事業へと具現化されていき、人間世界の変革のために教育事業も展開されていった。


 第三に、信徒主体による自由な集会が開催されていった。一部の過激な再洗礼派のように規制制度からの逸脱をすることなく、それぞれの教派的路線の中で、自主的な集会が開かれていった(例えば、「コレギア・ピエタティス collegia pietatis(敬虔の集い)。シュペーナーが創始。)が形成されていった。そのため、教派間での政治主導権を巡る闘争という構図から、特定の教派が優遇・冷遇されることがないよう政教分離が進展していくことになった。


 敬虔主義は、ドイツ神秘主義を生み出していったが、倫理の実践的側面の方が強調されていき、ヴェーバーが論じていくいったところの近代における倫理的・禁欲的実践へと傾斜していき、ピューリタニズムへと結実していった。


#宗教学

#キリスト教史

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