2023年7月1日土曜日

対抗宗教改革 Counter-Reformation

対抗宗教改革 Counter-Reformation


【要約】

宗教改革に対しカトリック側が自己改革も含めて実施した対抗的な営為を指す。トリエント公会議(1545-63)で教皇制を初めとしたカトリック的制度が強化され、プロテスタント化された都市を再カトリック化するために政治的・軍事的手段も採られた。

[Summary]

Counter-Reformation

It refers to the counter-reforms that the Catholics undertook against the Reformation, including self-reforms. The Council of Trier (1545-63) strengthened the papacy and other Catholic institutions, and political and military measures were taken to re-Catholicize Protestantized cities.


本文

 プロテスタント宗教改革運動に直面し、自らを揺さぶられたカトリック教会が自己改革を目指して行った一連の営みのこと。


 広義の「対抗宗教改革」は、プロテスタンティズムに対する防衛と対抗の全てを含む。他方、狭義では、トリエント公会議において再建された教皇制の許に、カトリック教会が皇帝、領邦の領主等の世俗の権力を借りて行った、プロテスタント化された都市、領邦、地方への軍事的・政治的な再カトリック化の企てを指す。対抗宗教改革は、内的な宗教的改革のみならず、こうした外的な政治的側面をも含むものである。


 トリエント公会議

 トリエント公会議(1545-1563 CE)とは、北イタリアのトリエントにおいて、教皇パウルス3世によって招集されたカトリック側の教会会議である。本公会議においては、1.旧約外典を採用し、ウルガータを定本とすること(正典の決定)、2.ルターの説く人間の完全堕落の否定(人間における善行の可能性と義忍における必要性)、3.二種配餐の否定および7つのサクラメントの確認、4.煉獄、贖宥制度、聖画像・聖遺物崇拝の認定等が決議され、プロテスタントに対するカトリック側の立場が先鋭的に明確化された。


 30年戦争

 対抗宗教改革の時代は、ルター派、カルヴァン派、カトリック教会による教派的領邦ないしは教派的国家の設立を巡っての教派競合時代であり、宗教的利害が複雑に政治的利害と絡み付き、やがてそれは軍事力による解決という出口を求めて、結果として、ドイツを舞台としてヨーロッパ全域を巻き込む「30年戦争」が引き起こされた。


 文化史的意義

 対抗宗教改革には、カトリックの教理的確立、宗教的政治的闘争以外に、文化史的な意義が認められる。プロテスタントの簡素志向に対抗してのバロック芸術の台頭や、プロテスタント側による迫害をモティーフにした作品の生成等、概して反プロテスタント的ではあるが、カトリックは自覚的に自らの精神性を発露した。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。