2023年7月28日金曜日

ユルゲン・モルトマン

ユルゲン・モルトマン Jürgen Moltmann, 1926-


 パネンベルクと共に、バルト及びブルトマン学派の次世代の代表的神学者。世界史的地平を包括した「神と歴史」という主題を基調にする。方法論的にはパネンベルクのようにバルトの対極には立たず、批判的継承路線を採る。上からの神の言葉の神学に属するとも言える。


 1926年ハンブルク生まれ。第2次大戦においてイギリスでの捕虜生活を経験。帰国後、1948-52年、ゲッティンゲンで学ぶ。1952年、博士号取得。その後、ヴァッサーホルストにて5年間牧会に従事。

 1957年、バルトとは独立して改革派神学を展開したオランダのファン・ルーラーを通じて、終末論の未開拓の領域と使徒的宣教の神学を知り、バルトを超克する道の発見を志す。ユダヤ系哲学者E. ブロッホの『希望の原理』との思想的出会いや、宗教改革左派の神学研究、また、ボンヘッファー研究を経て、1964年『希望の神学』を執筆。1967年以後、チュービンゲン大学教授。


 その後の主著は、『十字架に付けられた神』(1972年)、『聖霊の力における教会』(1975年)であり、『希望の神学』と共に三部作をなす。


 『十字架につけられた神』

 これによる「十字架に付けられた方に基づく三位一体論神学」という流れが形成される。『希望の神学』では十字架に付けられた方の復活が議論されたのとは対照的に、本書では復活された方の十字架に強調点が置かれ、十字架の死が三位一体内部の出来事として捉えられ、これにより御子の十字架の苦しみと共に御父の苦しみが現れる。

 その結果、第一にギリシャ哲学以来の不変・不動の神概念に変更が加えられ、苦難の歴史を神自身の内部に持つ、愛の故に苦しむ神という概念が顕在化する。

 第二に、元来は経綸的な十字架の出来事が神の本質に加えられることにより、内在的三位一体論と経綸的三位一体論との間の区別が、三位一体論的十字架の神学によってアウフヘーベンされる。こうして、歴史の問題が神の外部の問題としてではなく、内部のそれとして変化する。モルトマンの特徴は、この十字架の神学が政治的領域での神学展開へと続くことにあり、神学方法論に結合するユンゲルとは異なる。


 『聖霊の力における教会』

 『十字架につけられた神』における「世界史を包括する神の三位一体論的歴史」の中に教会が「メシア的共同体」として位置付けられ、その機能と課題が、歴史的・終末論的な聖霊論によって展開される。ここから結論される教会とは、告白する信仰者からなるカリスマ的共同体にして、自由教会型的なスタイルを採り、幼児洗礼には消極的である。未受洗者の陪餐可能性も示唆される。

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