2023年7月28日金曜日

ラインホルド・ニーバー

ラインホルド・ニーバー Reinhold Niebuhr, 1892‐1971 CE


 アメリカのプロテスタント神学者。キリスト教倫理学者。20世紀の代表的神学者にして、世俗の政治機関において影響力を行使した人物。ヨーロッパにおけるバルトやブルンナーらによる弁証法神学運動を受けて、アメリカにおける〈ネオ・オーソドクシー〉神学を展開した代表的存在。


生涯

 ドイツ移民のルター派教会の牧師の子として、ミズーリ州に生まれる。イェール大学神学部にて神学修士号取得。デトロイトのベセル教会の牧師となり(1915−28)、フォード社の労働者の悲惨な実状を目の当たりにし、これが彼の神学とその後の歩みに決定的影響を与える。1928年、ニューヨーク・ユニオン神学大学の招聘を受け、60年の引退までキリスト教倫理学の教授。1955−60年には副学長を務める。第二次大戦後の1946年以降は、トルーマン政権下のアメリカ国防省の政策立案委員会の顧問として、国内外の政策の基本的方向性に関わった。現代において、神学者として世俗世界における政治的影響力を行使した殆ど唯一無比の人物であり、彼の影響はジュレジンジャーなど現実主義的な政治学を展開する者たちにも及んだ。


神学

 基本的な神学的立場は弁証法神学であり、彼の育った環境から受けたルター派的な義認信仰、そして改革派的倫理を特色としている。彼の思想を支えるもう一方の軸として、キリスト教的リアリズムが挙げられる。デトロイトで現実を直視した経験を踏まえ、その体験から、終末論的な希望に基づいての世界共同体の実現を志向し、社会倫理の新しい展望を獲得した。


著作

『文明は宗教を必要とするか』(1928)、『道徳的人間と非道徳的社会』(1932)、『人間の本性と運命』(第1巻:1941; 第2巻:1943)


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