2023年6月30日金曜日

再洗礼派(英:anabaptist、独Wiedertaufer)

 再洗礼派(英:anabaptist、独Wiedertaufer)


 宗教改革に伴って現れた、幼児洗礼を否定し成人洗礼を提唱した幾つかのグループの総称である。「再洗礼派」という名称は、1度限りの洗礼を再度授けるという同派の特徴から、同派を批判する側から呼称された蔑称でもある。再洗礼派には幾つかの教派が属しているが、反体制的な思考に基づく成人洗礼を共通の特徴としているのみで、各教派はその発生場所、歴史的発展、教理を異にしており、同時的な相互干渉は少ない。


 以下に再洗礼派に分類される主要な流派を挙げる。


 スイス兄弟団

 ツヴィングリ(1484-1531 CE)によるスイス宗教改革の途上て゛発生したグループで、当初はツヴィングリと共に改革に参与するものの、市参事会との協調体制で穏健に改革を進めるツヴィングリに失望し、彼の許を離脱、そしてグレーベル( Konrad Grebel, c. 1498-1526 CE)、マンツ(Felix Mantz, c. 1480-1527)を中心に結成された再洗礼派である。結成初期においては、ドイツのフープマイヤー(Balthasar Hubmaier. c. 1480-1528 CE)に表されているように、国家教会の創設や、暴力行使による改革の断行という性質を呈していたが、ツウィングリと市参事会が弾圧を加え始めた1525年以降は、シュラトハイム信仰告白において、公職就任、兵役、暴力行使の否定を打ち出し、徹底的な平和主義と世俗との分離を強調した。教理的欠陥と迫害により、同団はその後解体した。


 H.フートによるドイツにおける再洗礼派

 ドイツ農民戦争後の民衆の精神的荒廃を背景に、ミュンツァーの神秘主義思想を受け継ぎ、急進的熱狂的な終末論を説く。フートの終末預言か゛外れたこともあり、間もなく同派は解体した。


 フーター派

 再洗礼派の多くが、プロテスタント、カトリックからの迫害のためにモラビア(チェコ東部)へ逃れ、同地で各派は融合、対立を繰り返し、その中からフーターを指導者としたフーター派が発生する。スイス兄弟団やフートの要素を併せ持ち、財産共有を基本とした共同生活を営んだ。北アメリカでは、現在でもフーター派兄弟団として存続している。


 メルヒオル派

 メルヒオル・ホフマンを指導者に、ストラスフ゛ール(フランス東部、アルザス地方)を拠点に発展したク゛ルーフ゜。終末到来とそれに伴う迫害、黙示録的預言を説き、千年王国説を展開した「ミュンスター再洗礼派」か゛、同派の影響を強く受けている。


 メノー派

 前述のミュンスター再洗礼派の壊滅後、幼児洗礼に疑問を持ちカトリック司祭からミュンスター再洗礼派に転向していたオランダのメノー・シモンズ(Menno Simons, 1496‐1561 CE)は、崩壊し始めたメルヒオル派をまとめ、ミュンスター再洗礼派の志向していた武力の行使を否定し、同派を徹底的な平和主義路線へと転換させた。そのグループがメノー派であり、同派はヨーロッパ各地に拡散した。現在同派は、幼児洗礼や兵役の拒否、絶対平和主義を特徴としたグループとして北アメリカでは20万人の信徒を数える。

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