2025年10月8日水曜日

説教や聖書研究をする人のための聖書注解 ヨハネ15:26-27

説教や聖書研究をする人のための聖書注解

ヨハネ15:26–27


注解

26節

新共同訳
「わたしが父のもとからあなたがたに遣わそうとしている弁護者、すなわち、父のもとから出る真理の霊が来るとき、その方がわたしについて証しをなさるはずである。」

原文
Ὅταν ἔλθῃ ὁ Παράκλητος, ὃν ἐγὼ πέμψω ὑμῖν παρὰ τοῦ Πατρός, τὸ Πνεῦμα τῆς ἀληθείας, ὃ παρὰ τοῦ Πατρὸς ἐκπορεύεται, ἐκεῖνος μαρτυρήσει περὶ ἐμοῦ.


「弁護者」

「Παράκλητος」(パラクレートス)。「傍に」「呼ぶ」という語が組み合わさった語で、「傍に呼ばれる存在」を意味する。そこから「弁護者」「助け主」「慰め主」などと訳される。ヨハネ福音書では聖霊を指し、父なる神からキリストを通して信徒に派遣され、信徒の神理解を深め、真理を人々に「証し」して悟らせる働きを担う。


  • 「父のもとから出る真理の霊」:「真理の霊」は聖霊の別称であり、他の用例は以下の通り。

14:17
「この方は、真理の霊である。世は、この霊を見ようとも知ろうともしないので、受け入れることができない。しかし、あなたがたはこの霊を知っている。この霊があなたがたと共におり、これからも、あなたがたの内にいるからである。」

16:13
「しかし、その方、すなわち真理の霊が来ると、あなたがたを導いて真理をことごとく悟らせる。その方は、自分から語るのではなく、聞いたことを語り、また、これから起こることをあなたがたに告げるからである。」


  • 「父のもとから出る」:聖霊の起源が、父なる神にあることを強調する表現。後代、ニカイア・コンスタンティノポリス信条においても、聖霊が父から発出することが西方教会側によって追記され、これが下記のフィリオクエ問題を引き起こした。

聖霊の父からの発出という教義 ― フィリオクエ問題

 6世紀、スペインのトレド公会議において、従来の文言「父から」(qui ex Patre)に「子からも」(Filioque)が西方教会で付加され始め、9世紀のカール大帝時代にはこの形が西方で定着した。1054年の東西教会分裂(Great Schism)の一因となったのは、この西方側による追加である。


  • 「その方がわたしについて証しをなさる」:「証しする」の原語は μαρτυρέω(証言する)。ヨハネ福音書神学を象徴する語であり、イエスの神性や使命を証言する意味で用いられる。主語となるのは、洗礼者ヨハネ(1:7)、イエス自身(5:31–32)、聖霊(15:26)、弟子たち(15:27)である。また、イエスの十字架や復活の目撃者も証しの主体として描かれる(19:35)。すなわち、聖霊がイエスを人に証しすることで人々は真理に導かれ、その聖霊の働きによって人はイエスを証しする者とされる。

27節

新共同訳
「あなたがたも、初めからわたしと一緒にいたのだから、証しをするのである。」

原文
καὶ ὑμεῖς δὲ μαρτυρεῖτε, ὅτι ἀπ’ ἀρχῆς μετ’ ἐμοῦ ἐστε.

  • 「あなたがたも……証しをする」:弟子たちもイエスの生涯と教えの目撃者であり、聖霊の働きによって聖霊と共に証人とされていく。
  • 「初めからわたしと一緒にいた」:弟子たちはイエスの公生涯の初期から同行し、イエスの活動を直接に体験してきた。その経験と目撃は、彼らの「証」の真実性の根拠となる。

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