2023年7月1日土曜日

ケーゼマン Käsemann, Ernst (1906-1998)

ケーゼマン Käsemann, Ernst (1906-1998)


 ドイツのルター派の聖書学研究者。マールブルク大学でブルトマンに師事し、彼から多大な影響を受けた。ブルトマンの高弟としても知られる。マインツ大学で新約聖書学を講じた後、ゲッティンゲン大学、テュービンゲン大学で新約聖書学の教授を務めた。


 彼は、師であるブルトマンが提起した「宣教のキリスト」(ケリュグマ)と「史実のイエス」(史的イエス)との連続性と断絶という問題を継承し、その克服を試みた。彼によれば初期キリスト教会は、ヘレニズム教団の霊的熱狂主義におけるキリストとの霊的自己同一化、並びに歴史性の捨象、栄光のキリスト論に対抗したという。そして、パウロは書簡という文学形式によって「十字架のキリスト」「宣教のキリスト」を提示し、他方、共観福音書記者は福音書という物語形式を通して、十字架刑を頂点とするキリストの生を示すことで歴史性を保持しようとしたという。このようにして原始教団の「宣教のキリスト」は歴史的なイエスの生と死に立脚している限り、「宣教のキリスト」と「史実のイエス」との間には、内実的にも歴史的にも連続性が保たれていると主張した。


[主著] E. ケーゼマン『自由への叫び——新約聖書と現代神学』(川村輝典訳, ヨルダン社, 1973年)。『パウロ神学の核心』(佐竹明・梅本直人訳, ヨルダン社, 1980年)。『ローマ人への手紙』(岩本修一訳, 日本基督教団出版局, 1980年)。

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